世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年11月27日

 2014年10月 、アーミテージ元米国務副長官とキャンベル元米国務次官補を共同議長とするアトランティック・カウンシルの超党派グループが、アジア地域の拡大抑止政策に関する包括的な政策提言を発表しました。以下、その概要を紹介します。

 アジア地域に対する米国の拡大抑止は、更なる挑戦を受けつつある。米国の拡大抑止が蝕まれれば、地域が不安定化する可能性は高まる。それゆえ、核の傘をアジア太平洋の同盟国に提供し続けることを繰り返し宣言するべきである。米国の強力なコミットメントを蘇らせることは、米国のアジア政策の最優先事項である。

 中国の通常戦力、核戦力の継続的な近代化は、地域の戦略バランスを変えつつある。さらに、中国が、東シナ海や南シナ海で領有権主張を強めていることも、米国の拡大抑止に対する挑戦の1つである。

 米国は、新たな軍事能力や外交、地域枠組などを包括的に活用することにより、北東アジアの同盟国を守らなくてはならない。中国や北朝鮮を抑止するためには、核戦力、通常戦力、グレーゾーンなど様々な紛争局面に対応する適切な能力の整備と、それを維持するための投資が必要である。核のトライアッド(戦略爆撃機、SLBM、ICBM)の近代化はもちろん、それを支える指揮統制機能も維持しなければならない。中国のA2/ADに対するエアシーバトル能力のように、新しい能力や技術の開発も不可欠である。こうした能力については、日本や他の同盟国・パートナー国と共同で検討するべきである。

 中国の海洋における強硬な行動を抑止するには、中国の行動により多くのコストを強いる効果的な戦略を構築する必要がある。同時に、米国は、中国が国際的なルールや規範を受け入れるためのインセンティブをどう与えるかを考えるべきである。それには、包括的な戦略的安定に向けた中国との関与が必要である。

 また、米国の同盟国・パートナー国は、水陸両用作戦やISR(情報、監視、偵察)、海上パトロール、海上阻止といった分野における能力や情報を共有、強化する方法を考える必要があろう。

 これらすべての努力は、外交戦略との連携が取れていなければならず、同盟国との密接な協力や米国の能力・意図にかかるコミュニケーションが重要となる。アジアにおける同盟国・パートナー国との戦略対話の強化を通じた、米国の通常抑止への信頼性の維持、特に、日米同盟の深化が重要である。

 そして、関与や抑止のための経済・エネルギー面での関係も重要である。特に、TPP交渉を成功させ、米国による石油・天然ガスの輸出を実現しなければならない。

出典:Richard L. Armitage & Kurt M. Campbell  ‘Strengthening Deterrence in Asia’(Atlantic Council, October 2014)
URL:http://www.atlanticcouncil.org/images/publications/Ext_Det_Ch_Statement.pdf

* * *

 ここには、米国の核の傘維持への決意、アジア諸国との戦略対話の強化等が提言されており、すべて歓迎できます。最近米国では、10月16日に、ヘーゲル国防長官が「近代化され、反米的になったロシア軍に対処する必要性」を公言する等、本提言と合わせて軍備再増強を呼びかける発言が目立っています。1990年代初期、クリントン政権による「日本たたき」があった頃、「東アジア戦略報告書(通称ナイ・レポート、1995年)」が発表され、ワシントンでの潮流を変えたことを想起させます。

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