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2014年12月16日

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村中璃子 (むらなか・りこ)

医師・ジャーナリスト

医師・ジャーナリスト。東京都出身。一橋大学社会学部・大学院卒、社会学修士。その後、北海道大学医学部卒。WHO(世界保健機関)の新興・再興感染症対策チーム等を経て、医療・科学ものを中心に執筆中。京都大学大学院医学研究科非常勤講師も務める。

フルゲノム解析のビッグデータでオーダーメイド医療を行い医療費削減。よく耳にするそんな未来像の前に、具現化しつつある「ヘルスケア」の実態。

※前篇はこちら

 「私の行っているジムでは、DHCのダイエット遺伝子検査が大人気。こっちもやってみようかと」(40代、女性)

 サプリメント販売大手のDHCは、ダイエット対策と美肌対策の2種類の遺伝子検査キットを販売している。価格は約5000円とまさに占い価格だ。このダイエット対策キットで見ている3つの遺伝子、実は「肥満遺伝子」として一時期メディアでも注目を浴びたもの。メタボ健診という言葉が出てきたころ、複数の健康保険組合がこの遺伝子検査を人間ドックに取り入れようとしたが、有識者たちの「根拠が薄い」との勧告に慌ててそれを中止したといういわくつきの経緯も持つ。

 「論文から引っ張ってきたものだから、結果に作為的なものを入れてはないだろうが、この結果だからこうすればよいといったことは証明されていないものがほとんど」と、北里大学教授の高田史男氏は、現在の遺伝子検査が予防に使えるエビデンスに乏しいことを指摘する。中には「東大医科研にしろヤフーにしろ、ぜんぶ『不安扇動ビジネス』」と、厳しい意見の専門家もいる。

遺伝子検査は「インパクト」

 遺伝子検査の後で、サプリの購買に誘導されるDHCはわかりやすい例。むしろそのわかりやすさが良心的にすら思えるほど確信犯に感じられるのは、医学の顔を借りた「ヘルスケア」という名のビジネス。ある事業者の責任者は、取材に対し、ついこう漏らした。

 「現状の遺伝子検査は確かに医療に使えるようなエビデンスはありません。ですが、医療のような確度があれば、人は変わるのでしょうか? 健康診断で悪い結果が出ても、なかなか行動は変わりませんよね。遺伝子情報はインパクトがあるから、健診より人々を変えるかもしれないと思っています」

 そう、今の遺伝子検査ビジネスにあるのは「エビデンスではなくインパクト」。ヤフーは「ヘルスデータラボ」を掲げ、Yahoo! JAPAN IDと紐づいたビッグデータで医療費削減やオーダーメイド医療が実現するというが、それは実現するとしても相当に遠い未来の話。遺伝子検査を集客・送客のツールと考えるヤフーからは、当面、エビデンスに乏しい遺伝子検査結果に基づく数々のターゲット広告が送られてくることになるだろう。

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