チャイナ・ウォッチャーの視点

2014年12月26日

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 2014年12月22日、中国の新華通信社は中央政界を震撼させるような重大ニュースを発表した。胡錦濤前国家主席の側近である令計画・人民政治協商会議副主席(党統一戦線部長兼任)について、「重大な規律違反の疑いがある」として調査を開始したとのことである。習近平国家主席の肝いりの「腐敗撲滅運動」が進む中、この「重大な規律違反」は当然、「汚職」を指していると思われる。

胡錦濤派に牙をむき始めた習近平

令計画氏(写真:ロイター/アフロ)

 問題は、取り調べを受けた令氏という人物の立場である。彼は共産党内の主要派閥である共産主義青年団(共青団)派の中心人物として知られ、胡錦濤政権時代には政権の大番頭とよばれる党中央弁公庁主任を5年間も務めた大物だ。今まで、習近平指導部が進めた腐敗摘発は主に江沢民派に連なる引退幹部をターゲットにしていたが、胡錦濤派の現役幹部に摘発のメスを入れるのは初めてのことである。

 令計画氏の場合、2012年3月に大学院生だった息子が北京市内で高級外車を運転中に事故死した際、これを隠蔽しようとした疑惑が浮上していた。それ以来、収賄などの疑惑が取り沙汰され、党の規律部門が内偵していたと言われる。しかしそれでも、彼は胡錦濤派の強いバックアップがあり、摘発から逃れつつ、取り調べが発表された現在でも、共産党統一戦線部長の要職にとどまっている。そして前述の「取り調べ開始発表」直前の12月中旬発売の共産党機関誌には彼の寄稿が掲載されていることもあり、彼の地位は安泰であるように見えた。

 したがって、22日に発表された「令計画取り調べ開始」は、習近平国家主席の胡錦濤派に対する奇襲攻撃とも捉えられるが、問題は、習主席がどうしてこのタイミングで胡錦濤派に牙をむき始めたのか、である。

 それに関して、一つ注目すべきなのは、胡錦濤派のもう一人の重要幹部で現役の政治局委員・副首相の汪洋氏が12月18日に米国で行った興味深い発言である。16日から米シカゴで開催される第25回中米合同商業貿易委員会(JCCT)に汪洋氏が中国側の代表として出席したが、彼は会議の演説において次のような発言を行った。

 「米中はグローバルなビジネスパートナーではあるが、世界を導いているのはアメリカである。アメリカは既に秩序とルールを主導している。中国はこの秩序に参加したい、規則を尊重したい」と。その上で汪洋氏はさらに、「中国には、アメリカの指導的地位に挑戦する考えもなければそのような能力もない」と断言して、米中の協力関係の増進を訴えた。

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