オトナの教養 週末の一冊

2014年12月29日

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本多カツヒロ (ほんだ・かつひろ)

ライター

1977年横浜生まれ。2009年よりフリーランスライターとして活動。政治、経済から社会問題まで幅広くカバーし、主に研究者や学者などのインタビュー記事を執筆。現在、日刊サイゾーなどに執筆中。ブログ:http://golazo-sala.cocolog-nifty.com/pinga/

思いの外、時間を持て余してしまうのが年末年始。おせち料理を堪能しながら、テレビを観るのもいいが、せっかくの休み、新しい年に向けて見聞を広めるのも一案。そこで、当コーナーでインタビューした3人の方々に「年末年始に読みたい本」と題し、今年読んだ本の中から3冊オススメを聞いた。

 まず、最初に「奇妙なミュージアムから読み解くアメリカ」で、インタビューに答えていただいた東京大学大学院総合文化研究科の矢口祐人氏。

――『奇妙なアメリカ 神と正義のミュージアム』(新潮選書)の著者インタビューの際にはお世話になりました。アメリカ文化がご専門の矢口先生のオススメの本は?

『日系アメリカ移民 二つの帝国のはざまで――忘れられた記憶 1868-1945東栄一郎 著、飯野 正子、長谷川寿美、小澤智子、飯野 朋美 翻訳、明石書店)

矢口:やはりアメリカに関する本をまず2冊ご紹介します。1冊目は、日本からアメリカへ渡った日本人、いわゆる日系移民についての『日系アメリカ移民 二つの帝国のはざまでーー忘れられた記憶 1868-1945』(明石書店)です。日系移民についての研究はこれまでも盛んに行われていましたが、その中でも特に重要な研究で、アメリカの歴史学会でも注目を浴び、賞を受賞したのが本書です。著者は、日本人でありながら、アメリカのアイビーリーグ・ペンシルベニア大学の歴史学部の准教授である東栄一郎先生です。アメリカにおいて、非常に優れた日系移民研究と言われる本書がようやく日本語で刊行されました。

 これまでの移民研究では直線的に語られることが多かったんです。たとえば、日本からアメリカへ渡った人たちが、現地で段々とアメリカ人になっていく。あるいは、現地で差別を受け苦しみながら、なんとか落ち着き、2世、3世が誕生するといった語られ方です。それは日本でもアメリカの研究でも同じく、現地に渡ったあと、何をし、どういう苦労があり、その過程で段々と日本性というものを失っていくかということが中心でした。

 しかし、東先生は日本にある日本語や英語の資料、アメリカにある日本語や英語の資料を丁寧に読み込むことで、両方の側面から書いたんですね。これまでの日系移民の研究では、アメリカに渡った後の英語資料が中心に使われることが多かったのですが、東先生のように両方の資料を丁寧に読み、移民の生活を描き出したのは初めてです。ですから、日本の移民研究は十分されたという意見もありましたが、全くの新境地を開いたと思いますね。

 本書では、移民たちは2つの国の狭間で生き、時には両方の国に受け入れられず、時には自分たちの言語能力や背景を利用し、自分たちの地位を築こうとし生きてきたと。そういった2つの国の間を行き来するイメージを描き出しました。それは物理的に両国を行き来するだけではなく、意識的にも文化的にも、あるいは経済的にも両国の狭間にまたがる移民たちの像とも言えます。

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