中印で水資源の争奪戦が勃発?
チベットのダム稼働で高まるインドの警戒感


弓野正宏 (ゆみの・まさひろ)  早稲田大学現代中国研究所招聘研究員

1972年生まれ。北京大学大学院修士課程修了、中国社会科学院アメリカ研究所博士課程中退、早稲田大学大学院博士後期課程単位取得退学。早稲田大学現代中国研究所助手、同客員講師を経て同招聘研究員。専門は現代中国政治。中国の国防体制を中心とした論文あり。

中国メディアは何を報じているか

(写真:アフロ)

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チベット初大型水力発電所、蔵木ダム1号発電機稼動記事(中央写真)『中国能源報』(2014年12月2日) http://paper.people.com.cn/zgnyb/html/2014-12/01/node_2222.htm

 中国チベット自治区にヤルツァンポ(雅魯藏布)川という渓谷を縫って流れる美しい河川がある。この河川にチベット地区で初の大型水力発電所が作られ、11月に発電機の一組が稼動し、発電を開始した。しかし、この大型ダムに対して下流のインドで批判的報道がなされ、警戒感が高まっている。中国との国境係争を抱え、兵士の越境事件が起きているインドにおいて洪水の可能性や生態系の破壊だけでなく、水資源の支配権を握られるのではないかという戦略面での不安が増しているのだ。

 そこで『中国能源報』のサイト「能源網」の「藏木水力発電の“生態争議”に直面して」(11月28日)と同紙「チベットが大型水力発電時代に突入」(12月1日)という記事からこの発電所の稼働を巡る中印間の矛盾、争点を紹介したい。

 事は中国西南部に位置するチベット自治区のヤルツァンポ川初の水力発電所、藏木水力発電所が11月23日に発電を始めたことに端を発する。インドのメディアは翌24日、この発電所がインドへの脅威になり、洪水や生態環境への影響をもたらすと懸念を示した。この報道を受けて中国外交部はさっそく声明を発表し、中国政府の立場を説明した。

ヤルツァンポ川の蔵木水力発電所プロジェクトとは?

 ヤルツァンポ川はチベット自治区を流れる世界最高の標高(平均4000メートル)を流れる大河であり、チベット西南部のヒマラヤ山北麓のジェマオソ氷河を水源とし、チベットを南東に流れながら中印国境近くで南北に大きく蛇行し、インドのアッサム地域を通りバングラデシュの真ん中を縦断し、インド洋ベンガル湾に流れ込む。全長は3848キロ(中国国境内2057キロ)だが、年間水量は1395億立方メートルと中国内を流れる河川では5番目(長江、黄河、黒竜江、珠江に次ぐ)の水量で流域面積は24万平方キロに及び面積でも中国5番目だ。

 全域での潜在的発電量は1億1000万キロワットで国全体の6分の1に相当し、主流では8000万キロワットと長江に次いで2位である。チベットの年間水資源量は4482億立方メートルに上り、潜在発電量は2億186万キロワットの発電が可能であり、全国の29%(中国全土の推定発電量は6億7600万キロワット)を占め、西の電気を東に送る重要な拠点になると期待されている。ヤルツァンポ川での支流には灌漑施設や小型発電所がいくつも作られているが、潜在的な開発余地はまだまだ大きい。

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「中国メディアは何を報じているか」

著者

弓野正宏(ゆみの・まさひろ)

早稲田大学現代中国研究所招聘研究員

1972年生まれ。北京大学大学院修士課程修了、中国社会科学院アメリカ研究所博士課程中退、早稲田大学大学院博士後期課程単位取得退学。早稲田大学現代中国研究所助手、同客員講師を経て同招聘研究員。専門は現代中国政治。中国の国防体制を中心とした論文あり。

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