WEDGE REPORT

2015年1月30日

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安井至 (やすい・いたる)

製品評価技術基盤機構理事長、東京大学名誉教授

東京大学大学院工学系研究科博士課程終了後、同生産技術研究所で助手、講師、助教授、教授。同国際産学協同研究センター長。58歳で辞職し国際連合大学・副学長。科学技術振興機構を経て、09年から現職。

水素の製造、運搬方法等で、燃料電池車のCO2排出量は大きく変わる。一連のエネルギー効率に目を向けるべきである。*前篇はこちら
「水しか排出しない究極のエコカー」、といった記述に出会うことが多くなった。トヨタが水素燃料電池車(Fuel Cell Vehicle、以下FCV)「MIRAI」を2014年12月15日から670万円+税で発売すると発表して以来のことである。

世界初の量産燃料電池車「MIRAI」(BLOOMBERG/GETTY IMAGES)

 当初1台1億円以上と言われていたFCVが、この価格まで下がったのは驚くべきことである。大容量の発電機を搭載した電気自動車(EV)とも言える車なので、EVの最大の難点である充電時間の長さを完全に克服しており、ガソリン車なみに約3分間で燃料(水素)を満タンにすることができるという高い実用性を備えている。

 しかも、災害時には電力が供給できる非常用電源車としての機能があるので、通常の家庭であれば、一週間以上の電気が使えるだろう。日本での究極的自己防衛に適合した車とも言えそうであり、将来の主流になる可能性を秘めている。

 まず、この車の走行時に「水しか排出しない」ことが一つの究極であることは認めよう。環境上、極めて優れているからである。これは、FCVが水素をエネルギー源として使用しているから得られる特性である。ガソリン車では、いくらクリーンな排気を目指しても、その燃焼時にでるCO2をゼロにすることは不可能である。

 しかし、「走行時には」という条件がついている。環境負荷を考えるときには、まず境界条件を設定するが、FCVの場合少しだけ視野を広げて、燃料になる水素はどうやって作るのか、と問われた途端に、非常に多くのことを考えることになる。

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