エネルギー問題を考える

2014年11月28日

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杉山大志 (すぎやま・たいし)

IPCC第5次評価第3部会報告書 統括執筆責任者

1991年東京大学理学部物理学科卒業。93年東京大学大学院工学研究科物理工学修士了、(一財)電力中央研究所入所。国際応用システム解析研究所(IIASA)研究員、国際学術会議科学執行委員、京都議定書CDM理事会パネル委員、産業構造審議会専門委員、IPCC第四次評価第三部会及び統合報告書主著者を経て、現職。(一財)電力中央研究所上席研究員。

日本のCO2数値目標をどうすべきか。今回は、過去の数値目標を振り返ろう。結論:政府に数値目標を達成する能力は無い。数値目標は強制するのではなく、飽くまで「参考数値」に留めるべきだ。

 日本は京都議定書の数値目標を「達成した」。しかしながら、エネルギー起源のCO2が減ったのか、というとそうではない。1990年と比べて、2012年には14%も増えてしまった。CDMや森林吸収で帳尻が合っただけのことだ。

 ではこの間、日本政府は多くの温暖化対策を実施したが、その効果はあったのか?

図1 家庭部門のCO2排出量。縦軸は1990年比の増加率。
05年の当初計画は08年に改訂されたが、実績値はその両者を大きく上回った。  拡大画像表示

大きく外れた家庭・業務部門の予測

 議定書の締結後、2005年に京都議定書目標達成計画(以下、単に「計画」)が定められて、それに沿って政策は実施された。だが、家庭部門と業務部門では、排出量の見通しは大きく外れた(図1、図2を参照)。計画が策定された当時、家庭・業務部門は2002年に1990年比で既に各々29%、37%の排出量増だったことが分かっていた。計画では、その増加傾向が「反転」して、2010年には各々6%、15%まで減少する、となっていた。

 だがこの2010年の目標は計画の実施途中で各々10%、27%に変更され、結局、2012年の実績値は業務・家庭部門でそれぞれ60%、66%と、大 幅に当初計画を上回る排出量増加になった。これには原子力発電停止の影響ももちろんあったが、震災前の2010年時点で各々35%、32%だったので、震 災が無くとも、当初の計画を大きく上回ったことに変わりはない。

 これは、リーマンショックやエネルギー価格高騰にも関わらず起きた(これもまた、全く予想できなかった)。もしもこれらがなければ、当然、もっとCO2は増えたはずだ。

図2 業務部門のCO2排出量。縦軸は1990年比の増加率。
05年の当初計画は08年に改訂されたが、実績値はその両者を大きく上回った。  拡大画像表示

 他方で産業部門では、石油価格高騰や金融危機などの影響もあり、計画策定時の見込みよりもCO2が減少した。結局、CDM、森林吸収、他の温室効果ガスなどを勘定に入れて、その合算として、当初計画で想定したのとは全く違う形で、京都議定書の数値目標達成という帳尻は合った。

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