被爆を知る幻のファーストレディー

"Resilience" by Elizabeth Edwards


森川聡一(もりかわ・そういち)
ITバブル期にニューヨークに住んだ経験を持つ経済ジャーナリスト

ベストセラーで読むアメリカ

ベストセラーを見れば世相がわかる--知っているようで知らないアメリカの実相を知ることは、日本を考えることに欠かせない。

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■今回の一冊■
RESILIENCE
 筆者Elizabeth Edwards, 出版社Broadway Books, $22.95

NBCのインタビュー番組で、夫の不倫、ガン、著書"Resilience"について語るエリザベス・エドワーズ(09年5月11日、写真・AP Images)

 アメリカでは悲劇のヒロインとしてとても有名なElizabeth Edwards(エリザベス・エドワーズ)の回想録だ。ニューヨーク・タイムズ紙の週間ベストセラーリストの単行本ノンフィクション部門で5月に一時、トップにつけるなど本書は女性読者を中心に圧倒的な支持を集めた。当コーナーで以前とりあげたマイケル・J・フォックスの回想録「ALWAYS LOOKING UP」を抑えての1位だっただけに、本書の人気振りがわかる。

米国きっての悲劇のヒロインはヒロシマで育った

 と言っても、日本人でエリザベスのことを知る人はほとんどいないだろう。少し説明すると、エリザベスの夫はノース・カロライナ州選出の元上院議員であるジョン・エドワーズ。ジョンは民主党の若手政治家のホープだった。2004年の大統領選では民主党の副大統領候補だった。2008年も民主党の大統領予備選に出馬し、オバマ、クリントンに次ぐ三番手として注目を集めた。ところが、大統領予備選の途中で不倫疑惑が報じられ、予備選から撤退した後、選挙キャンペーン用のビデオ撮影を担当した女性スタッフとの不倫を公式に認め謝罪した。

2008年大統領選に出馬したジョン・エドワーズ(Photo by Jonathan Walczak,
参考 http://johnedwards.com/)

 エドワーズ夫妻は96年に、当時16歳だった長男を自動車事故で亡くしているうえ、エリザベスは大統領選があった2004年に乳がんが発覚、苦しい闘病生活を経て治癒したかにみえたものの、2007年にがんが再発・転移し治癒の見込みがなくなっている。そして、夫の不倫である。本書はこうした不幸の連続を、不屈の精神(resilience)でいかに乗り越え生きてきたかを綴ったエリザベスの人生の記録だ。

 日本人にはまったく関係ない人物にみえるエリザベスだが実は、父親がアメリカ海軍のパイロットだったことから、エリザベスは成長期のほとんどを日本で暮らした経験を持つ。日本に非常にゆかりのある女性なのだ。

 そして、エリザベスが9歳だった1958年ごろ、父親が山口県岩国市にあるアメリカ海兵隊航空基地に勤務していたとき、ある日本人女性から三味線と日本舞踊を習った思い出を本書の中で披露する。Toshiko(としこ)と題した第4章で、その日本人女性のことを詳しく書いている。幼いころから綺麗だったとしこは10歳のときに広島の実家を出て、芸者になるため京都に行った。京都で芸者になるための修練を数年かけて積み、1945年の夏に広島の実家に一時帰省したとき悲劇は起きた。

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