オトナの教養 週末の一冊

2015年2月20日

»著者プロフィール
著者
閉じる

中村宏之 (なかむら・ひろゆき)

ジャーナリスト

1967年生まれ。91年、慶應義塾大学経済学部卒、読売新聞東京本社入社。ロンドン特派員、米ハーバード大学国際問題研究所研究員、経済部デスク、調査研究本部主任研究員などを経て2017年4月より読売新聞東京本社メディア局編集部次長。『御社の寿命』、『世界を切り拓くビジネス・ローヤー』、(いずれも中央公論新社)など

 トマ・ピケティ氏の『21世紀の資本』ではないが、700ページに迫る分厚い本である。にもかかわらず、一気に楽しく読める。なぜか。随所にスイスの魅力が詰まっているからである。

 スイスが様々な分野でどのようにして成功を収めたのかがよくわかる本である。アメリカの大学のビジネススクールなどで使うスイスに関する詳細な「ケーススタディ集」のようなものとも言えそうだ。あらゆる分野におけるスイスの強みを分かりやすく解説している。

様々なビジネス分野で成功を収める

『スイスの凄い競争力』(ジェイムズ・ブライディング 著、北川知子 訳、日経BP社)

 スイスに対して多くの人が抱くのは、風光明媚な土地で観光客が多く集まり、おしゃれで高級なスイス時計が世界の人々に人気、といったイメージだが、それ以外でも実に様々なビジネス分野で成功した国であることがわかる。

 食品、飲料、観光、時計、金融、医療技術、産業機械、医薬品など多くの分野で世界に通用する代表的な企業の多くがスイス発祥だったり、スイスに関係している。人口股関節の技術や、アメリカ・ニューヨークのジョージ・ワシントン・ブリッジをスイスで学んだスイス人技師の技術で作ったことなどは本書で初めて知った。

 確かに、筆者(中村)が英国に駐在しているとき、その一端を実感したことがあった。スイスの時計業界の取材をした時のことだが、職人の熟練した技による精巧な作りで、品質管理も徹底して高い競争力を保っている。スイス時計が高くても売れる訳である。自分が実感したのはスイスのごくわずかな部分にすぎないが、本書であらためてスイスの力を知り圧倒される思いがした。

 周辺の国が欧州単一通貨のユーロを使っている中で、スイスの通貨はスイスフランであり、大陸欧州への出張のたびにユーロと別に両替するのは面倒だった。しかも物価は周辺のユーロ圏の国々と比べて高く、こちらも出張者泣かせだった。しかしながら、個人的な印象だが、社会全体が醸し出していた「しっかりしたイメージ」は他の欧州の国とは少し違っていた。列車は定刻に発着し、飲食関連や工業品に関するブランドイメージは洗練され、いろいろな面で「きちんとしている」のである。

関連記事

  • PR
  • 新着記事

    »もっと見る