WEDGE REPORT

2014年12月25日

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磯山友幸 (いそやま・ともゆき)

経済ジャーナリスト

1962年東京生まれ。1987年早稲田大学政治経済学部卒業。日本経済新聞で証券部記者、同部次長、チューリヒ支局長、フランクフルト支局長、「日経ビジネス」副編集長・編集委員などを務め、2011年3月末で退社、独立。現在、経済政策を中心に政・財・官を幅広く取材、各種メディアに執筆するほか、講演やテレビ出演、勉強会の主宰など幅広く活躍している。オフィシャルHP(http://isoyamatomoyuki.com/)

著書に『2022年、「働き方」はこうなる』(PHPビジネス新書)、『理と情の狭間 大塚家具から考えるコーポレートガバナンス』(日経BP)、『国際会計基準戦争 完結編』(日系BP)、『ブランド王国スイスの秘密』(日経BP)など。共著に『オリンパス症候群 自壊する「日本型」株式会社』(平凡社)、『株主の反乱』(日本経済新聞社)などがある。

早稲田大学政治経済学術院(大学院)非常勤講師、上智大学非常勤講師。ボーイスカウト日本連盟理事。静岡県ふじのくにづくりリーディングアドバイザーも務める。

日経ビジネスオンライン(日経BP)、現代ビジネス(講談社)、フォーサイト(新潮社)、月刊 WEDGE(ウェッジ)、月刊 エルネオス(エルネオス出版)、フジサンケイビジネスアイ(産経新聞社)などに連載コラムなどを持ち、定期執筆している。

2014年は幕末に日本とスイスが国交を樹立してから150年の節目の年にあたり、日本・スイス両国で多彩な記念行事が行われている。スイスと日本は、山がちで天然資源に乏しい小国ながら、国民の勤勉さと教育で世界有数の豊かな国に発展してきたことなど、共通点が少なくない。だが、日本と大きく違う点がある。スイスが19世紀から移民の受け入れに積極的で、それを国の発展の原動力にしてきたことだ。日本でも、人口減少問題とのからみで移民の必要性が話題になるが、一種、タブー視されるところがあって、なかなか議論は進まない。駐スイス大使を務めた國松孝次・元警察庁長官が、地域コミュニティのあり方や、移民問題について、駐日スイス大使のウルス・ブーヘル氏と対談した。

國松:私は、1999年から3年間、駐スイス大使としてスイスに滞在しました。在任中、特に、私が強い関心を持ったのは、スイスの地方の町々でした。スイスにはゲマインデ(またはコミューン)と呼ばれる、日本では市町村にあたる基礎自治体があり、自分たちのことは自分たちで決める仕組みを守っています。そうした地域社会の強さと活力に感銘を受けました。そこでは、自治・自守・自決の精神にあふれています。住民相互の扶助意識、連帯感も強い。

國松孝次氏とウルス・ブーヘル氏

ブーヘル:まさに国の組織の最下層レベルであるゲマインデが強い自主決定権を持つことこそ、スイスという国のカギであり、特長です。さらに私はスイスという国が成功を遂げてきた理由のひとつだと考えています。過去数百年にわたってこの仕組みは機能してきました。

 700年以上前にスイス連邦が建国された頃に遡ると、山間部のアルプスのコミュニティでは住民が力を合わせることでしか問題解決はできませんでした。厳しい自然の脅威にさらされる中で、生活物資を確保し、生きていくのは、ひとりの力では不可能です。彼らが築いた共同体では、住民は等しく権利を持ちました。これによって住民は守られ、助けを得られましたが、同時に義務も負いました。

 権力者がいてコミュニティが作られたのではなく、個々人が集まってコミュニティを作り、権利と義務を負ったのです。ですから、自治体が自分に何をしてくれるのか、ではなく、自分たちが自分たちのために何をするかを考える。こうした市民感覚が育ってきたことが非常に重要だと思います。

 自分たちの必要なことなどまったく分かっていない隣の村の他人に決められるのではなく、地域の人たちが自分たちのことは自分で決める。これが非常に重要で、私たちは今でもシステムとしてこれを維持しているわけです。スイスという国家はトップダウンで作られたのではなく、ボトムアップで出来上がっているのです。

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