4月1日付の英フィナンシャル・タイムズ紙で、デイビッド・ピリング同紙コラムニストが、AIIB(アジアインフラ投資銀行)を巡る米中の戦いは、中国の勝利に終わったが、第2戦はTPP交渉であり、中国を排除するTPP交渉は不十分なものにならざるを得ないと論評しています。
すなわち、AIIBを巡る戦いは中国の完全な、それも意外な勝ちに終わった。
第1戦は米国の負けだったが、第2戦のTPPはこれからである。米国は、11の交渉参加国を説得している。TPPは日米という世界の経済大国を擁し、世界のGDPの4割を占める。推進論者は、TPPは米国のアジア太平洋へのコミットメントを再確認するものだと言う。
TPPから中国は排除されている。計画経済のベトナムが参加しているのに、地域最大の経済大国である中国が計画経済だ等との理由で交渉に招請されていないのは外交上の不思議な歪曲である。
中国排除は2つの目的にとって都合が良いものであるが、良く考えればいずれも理屈に合わない。第1は、TPPは米国のアジア・ピボット政策の経済版であるとの考えである。しかし、多くの国が米国はTPPを通じてそれぞれの国内政策に介入しようとしていると懸念している。第2は、当初排除しておいた方がむしろTPP参加に向けて中国の改革を促進することになるとの期待論である。しかし、この考えは馬鹿げている。中国は米国が参加しないRCEP構想を推進していることに鑑みれば尚更である。
TPPが最終的に妥結しても、内容は、貿易論者から見れば不十分な、相当薄められたものになる可能性が高い。AIIBで勝利感に浸る中国にとっては、非常に楽しい光景に違いない、と述べています。