「無死1塁で送りバント」という定石とリスク 「なにもしない」という戦術が利益を最大化することも

(7)野球の戦術・戦略


漆原次郎 (うるしはら・じろう)

1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、科学技術関連の記事を寄稿。早稲田大学大学院科学技術ジャーナリスト養成プログラム修了。日本科学技術ジャーナリスト会議理事。著書に『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』『日産驚異の会議』『宇宙飛行士になるには』など。

学びなおしのリスク論

(画像:istock、a2bb5s)

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「リスク」とは、避けるべき対象であるとともに、取りにいくべき対象にもなる。損失の危険は大きいけれども、大きな利益を期待できる状況は「ハイリスク・ハイリターン」という。そして、危険を承知で行動することを「リスクテイク」という。

 リスクテイクして利益を得ようとするとき、課題になるのは「本当にそのリスクテイクは大きな利益をもたらすものか」ということだ。定石と思われているようなリスクテイクの方法が、じつは大して利益を期待できないものだったといったような、常識の計算の間の齟齬も潜んでいるかもしれない。

 こうしたことを考えるうえで好材料になるのが、野球だろう。野球には、常に「無死1塁」や「二死満塁」といった“局面”がある。そこでどんなリスクテイクをとるかによって、また別の局面を迎える。局面ごとの結果をデータに蓄積していけば、各種のリスクテイクに対して実際どのくらい利益を得られるものなのか、その傾向が見えてくる。

 実際、野球では、データを統計学的に客観分析し、試合での戦術や球団運営の戦略などを考える「セイバーメトリクス」という手法がある。米国で生まれたもので、「セイバー(SABR)」は、米国野球学会(Society for American Baseball Research)の頭文字をとったものだ。

 今回は、セイバーメトリクスを駆使して、野球を既存とは異なる角度から考えている「DELTA」代表の岡田友輔氏に、リスクテイクのあり方を聞くことにした。岡田氏らは、プロ野球開幕時期、セイバーメトリクスの観点からそのシーズンの観戦のしどころや分析成果を論じる『プロ野球を統計学と客観分析で考える』を上梓しており、3月には第4弾を発行した。野球分析の専門家は、リスクテイクをどう見ているのだろうか。

岡田友輔氏。合同会社「DELTA」代表社員。統計的な見地から野球の構造・戦略を探るセイバーメトリクスを専門に分析活動に取り組む。2011年に同社を設立。日本でのセイバーメトリクスの普及を目指し基盤整備に取り組む。著書に『日本ハムに学ぶ勝てる組織づくりの教科書』(講談社プラスアルファ新書)など。また、DELTAのメンバーによる共著書『プロ野球を統計学と客観分析で考える セイバーメトリクス・リポート』(水曜社刊)は、2015年3月に発売されたものでシリーズ4作目となる。「米挑戦からの復帰組という補強チャンネルの今後は?」といった旬の話題も豊富。
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「学びなおしのリスク論」

著者

漆原次郎(うるしはら・じろう)

1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、科学技術関連の記事を寄稿。早稲田大学大学院科学技術ジャーナリスト養成プログラム修了。日本科学技術ジャーナリスト会議理事。著書に『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』『日産驚異の会議』『宇宙飛行士になるには』など。

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