2024年4月19日(金)

韓国の「読み方」

2015年5月26日

 ただ、1910年が、日本の産業化における画期的な年として従来から認められてきたのかと問われれば、かなり苦しいと言わざるをえない。

 象徴的な施設の一つとなっている長崎県の「軍艦島(端島)」で保存運動に取り組んできた関係者によると、世界遺産申請の話が出た当初から、関係者の間では朝鮮人徴用への反発が出るのではないかという懸念があった。そのため、軍艦島などは対象から外そうと検討されたこともあったという。この関係者は「この問題をクリアできるようにしたのが、1910年という区切りだった」と話した。

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 石破茂・内閣府特命担当相は5月8日の記者会見で、「ロンドンにおいて日英博覧会というものが開催をされ、そこにおいて日本の新しい産業の発展が一つの区切りということになったものだという議論がなされて今回の勧告になった」と説明すると同時に、「この年は日韓併合の年ではないかという指摘も当然予想される」と話した。石破氏の発言にある通り、1910年というのは、韓国との関係においては感情的反発を呼びやすい年でもある。

 この問題では、日韓両国の専門家や外交官の多くが「昔だったら事前調整がきちんと行われ、大きな問題にはならなかったはず」と口をそろえる。当初からそうした懸念を持たれていたにもかかわらず、最終局面になるまで放置されていたということは、まさに近年の両国間における意思疎通の不在を象徴するものといえるだろう。

*参考:http://www.cao.go.jp/minister/1412_s_ishiba/kaiken/2015/0508kaiken.html

  
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