韓国の「読み方」

2015年3月23日

»著者プロフィール
著者
閉じる

澤田克己 (さわだ・かつみ)

毎日新聞記者、前ソウル支局長

1967年埼玉県生まれ。慶応義塾大法学部卒、91年毎日新聞入社。99~04年ソウル、05~09年ジュネーブに勤務し、11~15年ソウル支局。15年5月から論説委員。著書に『「脱日」する韓国』(06年、ユビキタスタジオ)、『韓国「反日」の真相』(15年、文春新書、アジア・太平洋賞特別賞)、訳書に『天国の国境を越える』(13年、東洋経済新報社)。礒﨑敦仁慶応義塾大准教授との共著『LIVE講義 北朝鮮入門』(10年、東洋経済新報社)を大幅に改訂した『新版 北朝鮮入門』(東洋経済新報社)を17年1月に刊行予定。

 米国のマーク・リッパート駐韓大使が3月5日朝、ソウル都心の世宗文化会館での朝食会に出席した場で、果物ナイフ(全長25センチ)を持った金基宗容疑者(54)に襲われ、右頬を80針縫う大けがを負った。日本でも1964年、エドウィン・ライシャワー駐日米大使が暴漢にナイフで襲われて重症を負う事件が起きているが、近年は、同盟国の首都で米大使が襲われる事件は起きていない。それだけに、国際社会に大きな衝撃を与えた事件だった。

襲われたリッパート駐韓米大使(写真:Yonhap/アフロ)

 金容疑者は、2010年にはソウル市内で講演した日本の重家俊範駐韓大使に石を投げつけ、外国使節に対する暴行の罪で懲役2年、執行猶予3年の有罪判決を受けたことがある。かつては竹島問題などで日本を非難する活動を熱心にしていたが、最近は、対米非難に重心を移していた。07年には、青瓦台(大統領府)前で焼身自殺を図ったこともあり、警備当局には要注意人物と見られていた。リッパート大使を襲った際も、地元の警察署の警官が金容疑者を見つけて主催者に排除するよう忠告したが、結果的に間に合わなかったという。

 金容疑者は現場で取り押さえられた際、始まったばかりの米韓合同軍事演習への反対などを叫んだ。演習を「北朝鮮侵略のためのもの」と決めつけて反発する北朝鮮の主張に通じるものであることもあり、韓国政府と与党は事件翌日には「(北朝鮮に追従する)従北勢力が起こした事件」だと断定。捜査当局は、国家保安法の適用を念頭に置いた捜査を進めている。

かつて、韓国には反米感情などなかった

 金容疑者が「従北勢力」かどうかは、今後の捜査などを見ないと分からない。ただ、「反米的な傾向を持つ民族主義者」だとは言ってもいいのだろう。ところで、韓国における「反米」というのは、実は、それほど長い歴史があるわけではない。極端な言い方をすれば、かつての韓国には反米感情というものが存在しなかったのだ。

関連記事

  • PR
  • 新着記事

    »もっと見る