韓国海軍退役大佐で韓国海洋戦略研究所上席研究員の尹碩俊(ユン・スクジュン)が、Diplomat誌ウェブサイトに2月20日付で掲載された論説において、THAAD(終末段階高々度地域防衛)ミサイルの韓国配備問題に対する中国の懸念は当てはまらず、THAADは米軍が運用するものであるから、懸念は韓国ではなく直接米国に言うべきである、と主張しています。
すなわち、中国は、米国のTHAADミサイルの韓国配備問題につき、韓国に対して強い圧力をかけている。
中国は、この問題は中国に対する「挑発」とみる。THAAD配備により韓国は米主導のミサイル防衛(BMD)システムの一部に組み込まれる。他方、韓国が独自に開発中のミサイル防衛システム(KAMD)は、米国のミサイル防衛網に統合されるものではないので、中国に敵対する性格は小さい。
中国が抱く恐怖は正当か。中国の軍事関係者は、THAADが北朝鮮のミサイル防衛だけではなく、米国のアジア・リバランス政策の軍事戦略になっていると警戒している。中国の最大の懸念は、アジア太平洋総合統合ミサイル防衛システムが中国国防空域に浸透し、中国の防空力を阻害することである。中国指導部は、THAADとイージス・システムの日本、韓国での配備運用は、短中距離ミサイルで米国の前方展開基地を叩く、中国のA2/AD戦略を無効化し得ると、懸念している。
しかし、韓国に配備されたとしても、THAADは在韓米軍を守るために米軍が運用するシステムであるから、中国が考えるような「ゲームチェンジャー」ではない。中国は、懸念を持つのであれば、韓国ではなく米国に直接言うべきである。
さらに、中国は、韓国が、中朝関係が悪化する中、中国の核心的な戦略パートナーであることを忘れてはならない。韓国には中国挑発の意図はなく、中国の立場を理解している。
中国は、THAADは北朝鮮の脅威に対処するものだとの米国の説明を受け入れるべきである。中国は、韓国には米国のBMDシステムに統合される意思はないことを認めるべきである。中国は弾道ミサイル能力を向上させるであろうから、THAADが韓国に配備されても中国は防衛力を維持し得る。