2024年4月25日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年6月17日

 5月11日付のインターナショナル・ニューヨーク・タイムズ紙で、ニューヨーク・タイムズ紙のBaker及びShear両記者が、サウジのサルマン国王がオバマの招集したサミットを欠席することは、中東で長年にわたり目標を共有してきた両国が、今や基本的に対立していることを意味する、と述べています。

画像:iStock

 すなわち、イランとの核交渉、ISの台頭、アラブの春に続く中東の不安定、世界のエネルギー市場の変貌の4つの強力な要因が、両国間の緊張を高めていることは無視できない。米国のシェールブームは、米国をサウジ依存から解き放ち、何十年もの力関係を変えた。

 F.D.ルーズベルト大統領がアブドゥルアジズ国王と会ってから70年、両国は共通の利害、衝突する価値、シニカルな適応からなる複雑な婚姻関係をおくってきた。共通項は安定への願望であったが、今や両国の安定の考えは同じでない。

 オバマはイランとの交渉の妥結は、地域の紛争の拡大を防ぐ最善の方途となると考えているが、スンニ派のサウジは、妥結して制裁が緩和されれば、シーア派のイランは何十億ドルも使い、地域の不安定をさらに煽るだろう、と見ている。シリアでは、サウジがアサド追放のためより積極的な行動を望んでいるのに、オバマは介入を躊躇している。米国は中東の民主化への動きを善しとしているが、サウジはアラブの春の余波は、サウジ政権にとって脅威であると見ている。

 その間ノースダコタとテキサスでのシェールオイルの増産で、米国の石油輸入依存が減り、サウジの石油供給削減を恐れることなく振る舞える。

 米国とサウジは依然として基本的利害を共有するとの見方もあるが、専門家は、米国はサウジとイランの危険な代理戦争に巻き込まれたくないと思っており、米国は今回のサミットで湾岸諸国が満足するような約束はしないだろう、と言っている、と述べています。

出典:Peter Baker & Michael D. Shear ‘King’s Absence at Meeting Signals a Saudi-U.S. Marriage Adrift’ (International New York Times, May 11, 2015)
http://www.nytimes.com/2015/05/12/us/politics/kings-absence-at-summit-signals-saudi-us-marriage-on-rocks.html?_r=1

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 サルマン国王のオバマサミット欠席の決定が波紋を呼んでいます。米、サウジ当局者は、欠席の決定はサウジが米国に肘鉄砲を食らわせたのではない、と説得に努めていますが、米・サウジ関係に問題があることを象徴していることは間違いありません。


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