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2015年7月2日

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中西 享 (なかにし・とおる)

経済ジャーナリスト

1948年岡山県生まれ。1972年共同通信社に入社、経済分野を取材し編集委員などを経て2010年に退職し、現在は経済ジャーナリスト。

 最近、電車の中でも専用端末やスマートフォンで電子書籍を読んでいる人を見かけるようになってきた。数年前から電子書籍を読むための専用端末などが販売され、紙との同時発売が増えたことなどから電子書籍の市場が徐々に拡大してきている。

 しかし、市場の7~8割はコミックが占めており、雑誌や人気作家の小説などのジャンルにいかにして広げていくかが課題になっている。ノーベル文学賞に最も近いといわれている村上春樹の作品は、日本語では電子化されず紙のみで提供されており、読者層を増やすためには人気作家をいかに説得するかもポイントになる。

「本格的な拡大期」

 電子書籍の市場を調査しているインプレス総合研究所によると、2013年度は雑誌と書籍を合わせた電子書籍出版の市場規模が初めて1000億円を突破し、「本格的な拡大期に入った」と分析し、18年度には3340億円にまで伸びると予測している。だが、1兆6065億円(2014年)といわれる出版市場全体からみると13年度の電子書籍の売り上げは6%程度しかなく、電子書籍が既に3割以上になったといわれる米国と比べると割合が小さい。

 手軽にいつでもどこでも読めるスマートフォンや専用端末の保有者が増えたことに加えて、電子書籍を配信する書籍ストアの取り扱いコンテンツが拡大し、携帯電話会社による定額制読み放題サービスなどが始まったことで読者の層が広がってきた。

 専用タブレット端末「キンドル」を12年から日本で販売しているアマゾンの玉木一郎キンドル事業本部長は「『キンドル』で読める本は現在コミックを含めて30万冊を超える品ぞろえがあるが、これをさらに充実させ、価格については読者の納得感のある価格にしたい」と話す。6月30日に高解像度の新モデル『キンドル ペーパーホワイト』を発売、専用端末市場で攻勢を強めている。

 同じく専用端末と電子書籍を販売している楽天の糸山尚宏Koboジャパン部マーケティンググループマネージャーは「文芸書を含めた電子書籍の総合書店を目指したい。市場規模は10倍以上ある」と、9000万人を超えた楽天グループ会員数を背景に強気の予想をする。

 米国の場合、紙と比べて電子書籍の価格が半額以下になる「価格破壊」が起きたことで大きく伸びた。電子書籍は定価で販売しなければならない紙の書籍と違い、電子書籍ストアや出版社が値段を自ら決めることができる。だが日本の場合、人気のある新刊書はコミックを含めて紙と同じ値段で発売され、下がったとしても紙の7~8割で販売されるものが多い。「納得感」のある値決めをどのように決めるのかも重要な課題だ。

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