発信力と創意工夫
戦う町のお寿司屋さん

高砂寿司


島村菜津 (しまむら・なつ)  ノンフィクション作家

大学卒業後イタリアへ留学。十数年にわたって取材したイタリアの食に関する『スローフードな人生!-イタリアの食卓から始まる』がスローフード運動の先駆けとなった。近著に『スローシティ 世界の均質化と闘うイタリアの小さな町』(光文社新書、2013年3月15日発売)など。

都会に根を張る一店舗主義

地元の駅前も、実家の周りも、どこにでもあるチェーン店ばかりになっていく。商店街もますますしんどい昨今、強かに生き残る個人店は、ぜひ大事にしたい。個性豊かで、心のほっこりする味わい深い店を探して首都圏を歩く。

»最新記事一覧へ

食いしん坊のS氏から、おいしい寿司屋があるから、と大森に誘われた。練馬区のわが家から大森駅は、かなりの遠征である。しかも駅前ではなく、駅から車で3メーター、バス(森07)で15分という距離だ。

外観は、ごく普通の町のお寿司屋さん。「高砂寿司」の魅力とは…

 それでも誰かを誘いたくなる魅力とは、いったい? という疑問が湧き、思わず、その『高砂寿司』のサイトを覗いた。

地元密着型の町の寿司屋、世界に向けて発信

 大手の業者が入った派手さはなく、いたって素朴なサイト。高くもない。

アボカドやズワイガニ、とびっこの入るカリフォルニアロールの外側に、さらに赤身やサーモンが加わるレインボーロール(1200円)

 しかし、おやっと思わせるのは、チャンネルの多さ。本格江戸前を謳いながら、子供が悦びそうな創作巻き寿司が並んでいるかと思えば、予約制でフグのコース料理もいただける。

 そして「ちょっと味な話」という、江戸前とは何か、フグを捌くのはいかに大変かといったコラムに、きちんとした英訳までついている。

 一見、地元密着型の町の寿司屋でありながら、同時に世界に向けて発信している。

 これは、面白そうだ! というわけで意気揚々出かけると、この日は雨模様、だが、そのバスの湿気と倦怠感を掃うかのうように、「昨日、大将のブログをみたら、今日はうまいウマズラハギが入ってたなあ」とS氏の陽気な食いしん坊パワーが弾ける。上池上バス停で降り、少し戻るとすぐのその店は、やっぱりごく普通の町の寿司屋。教えられなければ、まずここまで遠征はしないだろう。

1
nextpage
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
「都会に根を張る一店舗主義」

著者

島村菜津(しまむら・なつ)

ノンフィクション作家

大学卒業後イタリアへ留学。十数年にわたって取材したイタリアの食に関する『スローフードな人生!-イタリアの食卓から始まる』がスローフード運動の先駆けとなった。近著に『スローシティ 世界の均質化と闘うイタリアの小さな町』(光文社新書、2013年3月15日発売)など。

WEDGE Infinity S
ウェッジからのご案内

Wedge、ひととき、書籍のご案内はこちらからどうぞ。

  • WEDGE
  • ひととき
  • ウェッジの書籍