都会に根を張る一店舗主義

2015年6月10日

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 だが、この店が通受けするのは、大将が毎朝、自ら買いつける旬のネタ。お任せで、岩手県の殻つきウニ、松輪サバにうっとりしていたら、フグの白子、クジラ、半生タイプの手作りカラスミが出る。

 「毎朝、築地がお休みの水曜と日曜以外は、私が築地に足を運びます。開業以来のつき合いだから、変なネタはよこさない。魚は国産かって? マグロやサーモンなんかは外国産でもうまいものがありますが、旬のおいしいものだけ選んでいくと、9割は国産になりますね」

 さらに本領発揮は、江戸前の寿司。この店でいただいたコハダは最高だった。この年になるまで、下町の江戸前ファンが、何はなくともコハダと言い張る気持ちがどうもわかりかねていたが、この晩、「これだったのか」と納得。アナゴも絶品だし、江戸前を謳っていても、煮ハマグリを必ず用意してある店は珍しい。

しっとりとクセになる味わいのコハダ(左)、ふっくらと仕上がったあなごも絶品(右)

 「基調は、江戸前ですね。だからコハダ、煮ハマグリ、アナゴ、タマゴなんかは欠かさないようにしている。下ごしらえが大切だし、手間なんですよ」

 シャリは、先代から宮城県のササニシキ。コシヒカリと違い、粘りの少ないササニシキは、ネタの繊細な味を引き立てる。大将は、「品種より炊き方、水加減が大切」だという。

寿司屋を継ぐ気はさらさらなかった

 『高砂寿司』の名は、かつて、先代の親父さんが働いていた有楽町の電気ビルにあった店に由来する。その店の移転を機に独立、どうせなら、店の上に住みたいということになって、現在の場所に決めたそうだ。

 先代は寿司一筋の職人で、57年間、ひたすら寿司を握り続けた。幼い頃から、その店を手伝い、親しんだ世界ではあったが、当時、菅田さんは、寿司屋を継ぐ気などなかったという。

 「4年生の大学は経営学で、学生の頃は商社マンを目指していたんですよ。でも、大学3年の頃かな、うちが火事になって、そのこともあって親父が胃潰瘍で調子を悪くしてね」。ここで腹を括った。

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