WEDGE REPORT

2015年7月10日

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ジョン太郎 (じょん・たろう)

現役金融マン

大手銀行入社後、日系・外資系の様々な金融機関で、商品開発や戦略企画などの要職に就く。投資信託や不動産ファンド、ヘッジファンド、機関投資家の自己資金運用など様々な分野で投資・運用ビジネスに携わり、株式・債券・為替・REIT・不動産・コモディティ・デリバティブ等、多種多様な金融商品に精通。2005年より、ブログ「ジョン太郎とヴィヴィ子のお金の話」を開設。投資・運用・金融・経済など、お金にまつわる様々なトピックをわかりやすく親しみやすい言葉で解説し、人気を博している。近著に「外資系金融マンがわが子に教えたい「お金」と「投資」の本当の話」。そのほか、マネックス証券の「マネックスラウンジ」にてコラム「お金の相談室」連載中。著書に「ど素人が読める決算書の本 第2版」「ど素人がはじめる投資信託の本」(いずれも翔泳社)がある。http://jovivi.seesaa.net/

 

 先月までの1年間に中国企業の稼ぎ出す利益が2.5倍になって株価が2.5倍になったのか。そうではない。ただ単に、PERも見ずにお金を投じる投資家たちが、どんどんお金を入れ、流れ込んだ資金によって価格がかさ上げされ、さして利益が増えていないのに株価が大きく上がったのだ。

パニック売りを助長した中国政府

 この間にA株のPERは大きく上昇し割高感が増していた。実態の伴わない株価上昇と言っても良いだろう。あとはきっかけ待ちだけだった。ふとしたきっかけでひとたび株価が下落すれば、下落に驚いた投資家が売りに走り、その売りが更に株価を下げて新たな売りを呼ぶ。こうしてA株は大きく下落した。この1カ月弱の間に3割以上も値を下げていた。

 中国政府はA株の株価下落に歯止めをかけようと、株価対策を次々に打った。しかし、それらも株価下落を食い止めることはできなかった。このことが投資家の不安を増大させた。そして、株式を発行している企業側も投資家の不安を爆発させるような行動に出た。自社の株式を売買できないようにする売買停止措置をとったのだ。株を手放そうと株を売りたくても売れない状況を作ったのだ。

 こうなると、売買停止措置のとられていない銘柄にも影響が及ぶ。売買停止措置のとられていない株を持つ投資家も自分のもっている銘柄がいつ売買停止措置が取られるか分からないのだから、どんなに安値だろうと手放しておこうとする。売買停止措置は実に1300銘柄を超す銘柄でとられた。

 こうして昨日の大幅株安が引き起こされた。中国株だけでなく、日本株も大きく値を下げた。

今後の展開をどう見るのか?

 8日の大幅株安は日本企業や中国企業の利益が大きく下がったために引き起こされたものかと言えばそうではない。利益や利益を稼ぐ力に大きな変化は起きていない。単に値下がりをしただけのことだ。利益が下がった分だけ株価が下がればPERは変化しない。8日の株安は利益が下がっていないのに株価が下がった「PERの低下を伴う株価下落」、つまり単に割安になっただけなのだ。

 そして、まるで当然のことのように9日のアジア株市場は反発した。日本株は朝方こそ大きく下げたがその後、中国株の上昇を受けて下げ幅を縮小し、TOPIXで前日比-0.16%、日経平均で+0.6%、震源地の中国株はH株で+3.05%、上海A株が+5.76%、上海B株が+7.35%と大きく反発した。中国株は日中どんどん上げ幅を大きくしていった。

 PERが上昇していたA株が、割高感を調整する程度に下がるのはなんの不思議もないこと。しかし、利益見通しの変わらない市場がパニック売りを浴びてPERを大きく下げた株価で取引できるようになれば、当然ながらそこで買いに行く投資家がいる。投資家が誰も買わなくても、PERが低ければ同業他社が買収に動く。

 中国を代表する銀行のH株が今日はPER5倍前後で買えたのだ。ここから更に株価が下がれば、買収資金をすぐに回収できるくらい割安な水準になる。自国他国を問わず「欲しい!」と思う会社はあるはずだ。こうして株価は反発する。冷静にとらえることが大切だ。 

  
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