南シナ海と東シナ海の連動
予期せぬ衝突が起きる可能性
中国の力による現状変更を阻止できるか?


小原凡司 (おはら・ぼんじ)  東京財団研究員・元駐中国防衛駐在官

1963年生まれ。85年防衛大学校卒業、98年筑波大学大学院修士課程修了。駐中国防衛駐在官(海軍武官)、防衛省海上幕僚監部情報班長、海上自衛隊第21航空隊司令などを歴任。IHS Jane’sを経て、13年1月より現職。

チャイナ・ウォッチャーの視点

めまぐるしい変貌を遂げる中国。日々さまざまなニュースが飛び込んできますが、そのニュースをどう捉え、どう見ておくべきかを、新進気鋭のジャーナリストや研究者がリアルタイムで提示します。政治・経済・軍事・社会問題・文化などあらゆる視点から、リレー形式で展開する中国時評です。(画像:Thinkstock)

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「プラットフォームにレーダーを配備する可能性がある。空中偵察などのためヘリコプターや無人機の活動拠点として活用する可能性もある」

 2015年7月10日の衆議院平和安全法制特別委員会における、中谷防衛大臣の発言である。中国が東シナ海の日中中間線付近で建設している海上プラットフォームが、安全保障上の懸念になり得るとの認識を示した。

防衛省が公開した東シナ海にある中国の海上プラットホーム(防衛省/AP/アフロ )

 中国の海上プラットフォームが軍事利用される可能性があるということだ。しかし、中国は最近になって新たなプラットフォームを建設し始めたわけではない。
中国は、東シナ海の日中中間線付近においてガス田の開発を継続してきた。2013年から現在に至るまで、新しい海上プラットフォームを建設し続けている。

裏切られた中国の楽観的な予想

 この時期に日本政府が公表したのには、日本周辺の安全保障環境の変化を示し、国会における安全保障法制の議論を有利に運びたいという思惑があるかも知れない。
それにしても、中国は、二正面で、力による現状変更を試みようとしているのだろうか? 中国は、南シナ海でも、米国と対立を深めているのだ。

 2015年5月20日、米海軍は、P-8A哨戒機にCNNのテレビ・クリューを搭乗させて南シナ海の監視飛行を実施し、中国の人工島建設の様子などを報道させた。CNNの報道を見て、北京は驚き、腹を立てただろう。そうでなくとも、北京の指導者たちは、米国の監視飛行に苛立っていたはずだ。

 一方で、国際会議等で発言する外交部や研究者には、楽観的な空気もあった。「これだけ、米中経済相互依存が進む中で、米国は最終的には中国との衝突を避けるはずだ」と言う。現に、これまでは、米海軍機が中国の人工島周辺空域を飛行しても、米国はそれを公表してこなかった。米中間の、水面下の駆け引きのはずだったのだ。

 しかし、中国の楽観的予想は裏切られた。米国は、対立のステージを上げたのだ。中国が南シナ海で行っていることを、世界中に知らしめたのである。CNN報道の後、日本のみならず、欧州でも、中国の行為が、「航行の自由」という国際規範を脅かす可能性があると考え始めた。

 さらに、米国防総省スポークスマンのウォレン中佐が、「ポセイドン(P-8A)が、中国が人工島周辺に主張する12NMの領界に入ることは、将来、起こりうる」と述べたのだ。これは、中国にとっては決して受け入れられない。米国は、中国の南シナ海コントロールの根拠を、軍事力を用いて根こそぎ否定してやると公言したに等しいからだ。

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小原凡司(おはら・ぼんじ)

東京財団研究員・元駐中国防衛駐在官

1963年生まれ。85年防衛大学校卒業、98年筑波大学大学院修士課程修了。駐中国防衛駐在官(海軍武官)、防衛省海上幕僚監部情報班長、海上自衛隊第21航空隊司令などを歴任。IHS Jane’sを経て、13年1月より現職。

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