2024年4月26日(金)

World Energy Watch

2015年8月18日

 再稼働により、核燃料などのコスト負担が生じるが、それよりも大きい金額の化石燃料のコストが削減される明らかなメリットがある。川内原発1基の稼働により、削減可能な燃料費は現状の価格を基にすると年間約600億円だ。やがて、電気料金の引き下げにつながっていく筈だ。

温暖化にどう対処できるのか

 2030年の電源構成で、原発比率は20%から22%とされた。この理由の一つに温室効果ガスの排出抑制があるのは間違いない。政府は既に国連事務局に、30年の温室効果ガスの排出を13年比26%削減する目標を届けている。電源構成で低炭素電源と呼ばれる原発と再生可能エネルギーが排出抑制に果たす役割は大きい。

 しかし、再エネの比率をあまりに上げることは難しい。電気料金の上昇につながるからだ。今年度の再エネの買い取り額は1兆8000億円、賦課金額1兆3000億円、電気料金での負担は1kWh当たり1.58円に達している。標準家庭で月額約500円の負担だ。2030年時点の再エネ比率22%から24%での固定価格の買い取り費用は、3兆7000億円から4兆円とされている。大きな負担が消費者に生じることになる。
電源別の二酸化炭素排出量は表‐3が示している。電気料金を抑制しつつ二酸化炭素の排出を削減するには、原子力の利用が必要になる。

リスクと利点

 原発の再稼働は、エネルギー政策上は3つの利点をもたらす。日本において再稼働反対が多いのは、安全性がなによりも大切と考える人が多いからだろう。安全保障、コスト、温暖化対策より絶対的な安全性が大切と考えるか、事故のリスクはあるが、原子力を利用するメリットが大きいと考えるか、立場により異なるのかもしれない。

 熱中症を心配しながらも冷房用の電気を潤沢に使用できない2000万人といわれる貧困層を日本が抱えている状況があっても、再稼働する必要はないと言い切る自信がある人はどれほどいるのだろうか。97年をピークに平均給与が下がり続けている状況に終止符を打つには、電気料金の上昇が日本企業から競争力を奪っている現状を改善する必要もある。

 福島第一原発の事故後の英国の調査では、エネルギー安全保障と温暖化対策に寄与するのであれば、原発を新設すべきという人が50%を超えている。原発のあるリスクよりないリスクの方が大きいと考える人が過半数ということだ。日本ではその比率は20%だ。私たちはリスクとベネフィットをよく考えているのだろうか。好きか嫌いかで物事を判断していないだろうか。 

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