設立当初700坪だった風の谷幼稚園の敷地面積は現在4000坪にも及ぶ。これは校舎建設時の借金を返済しながらも、園長が「10年間無給」を貫き、寄付や父母の協力によって毎年開催されるバザー(前年度のバザーの売上は1日でなんと280万円!)で貯めた資金で、周辺の土地を買い増していった結果である。
「子どもたちに自然を残してあげたい」という想いが結晶したこの土地内には230坪の果樹園がある。そこで子どもたちは成熟したブルーベリーなどの実をもいで食べる。また、その果実からジャムをつくるなど、とにかく子どもたちの食欲、そして食に関する興味は旺盛だ。
また、近隣農家の協力を得て、筍堀りや芋掘りなどの行事も実に豊富である。自分で採った筍や芋は自分で背負って幼稚園まで持ち帰るのがルールだ。中には6キロを超える芋を背負って1.5キロの道のりを歩く4歳児もいる。あまりの重さに途中で泣き出してしまう子もいるが、仲間や先生に励まされながらやり遂げる姿には思わず胸が熱くなる。そして、みんなで料理を楽しみ、おいしくいただく。風の谷の子どもたちはこの上なく恵まれた環境の中で、食を通じて「心」と「体」が日々成長しているのである。
そして、これら一連の活動の根幹になっているのは、風の谷幼稚園が幼児期に必要な力の一つに掲げる「食の自立」という考え方だ。
人間的な豊かさを体感できる食生活
これをつくるのは大人の責任
では、風の谷幼稚園において「食の自立」とは何を意味するのだろう? 「食の自立」とは、具体的には以下のようなことが達成された状態をいう。
■食べることへの興味・関心を高める
■味覚を豊かにする
■食べるための道具、調理するための道具を使いこなす
■食事の用意、後片付けができる
■「食事」と「おやつ」の違いがわかるようになる
■規則正しい食事習慣を身につける
■食べる作法を身につける…