2024年4月20日(土)

中島厚志が読み解く「激動の経済」

2009年10月2日

 新政権の経済運営が福祉国家を目指すのであれば、福祉の充実を図る政策が中途半端であったり、ポピュリスト的であったりしては何にもならない。しかも、少子高齢化が進展して経済・社会ともに沈滞しかねない日本では、出生率の回復等成長につながる戦略も意識せずには済まされない。

 「福祉国家と市場主義的国家」、「大きな政府と小さな政府」は決して対立概念などではなく、福祉・社会保障の充実と民間部門の自由度・市場活力は両立しうる。それは、福祉国家の代表格であるスウェーデンで市場主義が日本以上に貫徹し、経済成長率も日本以上である現実を見れば一目瞭然である。

 スウェーデンでは、あくまでも支えるのはヒトであり企業ではないとし、企業は大いに市場メカニズムの中で競争してもらい、倒産等の場合にはヒトを支えるとの考え方が浸透している。そして、失業者に職業訓練を施し、再就職を容易にする積極的労働市場政策を採用する一方、企業には競争政策を適用することで、産業競争力の向上や経済活性化も図られている。

 これからの民主党政権の経済運営が大いに注目されるが、福祉国家を目指すならば中途半端に国民に甘いことばかり言うのは望ましくない。そして、新政権は、見せ掛けではなく、真に国民が豊かになる政策をなにより吟味して遂行してほしいし、そのやり方次第では、新たな世界の経済潮流をリードすることにつながるかもしれない。リーマンショックから1年、日本が再生できるかのみならず、新しい世界潮流の先頭に立って新たな先進国の経済モデルを創造できるかどうか、これからが正念場である。 

 

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