イノベーションの風を読む

2015年9月30日

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川手恭輔 (かわて・きょうすけ)

コンセプトデザイン・サイエンティスト

1990年代から、大手メーカーでインターネットサービスの企画・開発・運用を手がけ、自ら立案したグローバルなサービスを複数立ち上げた経験を持つ。その1つは、サービスのデザインでグッドデザイン賞を受賞した。コンピューターサイエンス関連の翻訳本も多数ある。

 9月9日にサンフランシスコで開催されたアップルのスペシャルイベントで、新型のiPhoneやiPadなどが発表された。すべての製品が正常進化したという印象で大きなサプライズもなく、CEOのティム・クックのキーノートでスタンディングオベーションが起こることはなかった。

iPhone6sを発表するティム・ククCEO(Getty Images)

スマホエコノミー

 2013年にスマートフォンの出荷台数が10億台を超え、デジタル時代の経済圏の中心はパソコンからスマートフォン(スマホエコノミー)に移った。マイクロソフトに代わってその頂点に立ったアップルは、持続的なイノベーションによって、スマホエコノミーを破壊することなく安定的に拡大するようにコントロールしようとしている。これは「時計も、音楽もiPhoneのため」という記事でも書いたことだ。

 いまのアップルにとって重要な顧客は、マジョリティと呼ばれる新しい製品の購入やサービスの利用に慎重な人々だ。イベントに詰めかけたアップルのファンにではなく、ようやくスマートフォンの利用に踏み切ったマジョリティ達にフォーカスすることが、今後、収益性と成長率を高めていくためにアップルが採るべき戦略だろう。iPhone5やiPhone5sを使っているマジョリティたちは、その機器になんらかの不具合が生じたときに、安心して新型のiPhoneを購入することができる。しかし当分のあいだ、彼らがApple WatchやApple TVを購入することはないだろう。

 米IDCが公表した第1四半期と第2四半期の数値を合計すると、今年の上半期のスマートフォンの世界出荷台数は、前年比12.8%増の6億7150万台になる。サムスンは前年比7.4%減の1億5560万台、アップルは13.8%増の1億870万台だった。高機能・高価格のスマートフォンは、ほぼサムスンとアップルだけになり、ソニーやLGは失速してその他に分類されるようになってしまった。代わって、ファーウェイ(華為技術)やシャオミ(小米科技)といった、そこそこの性能を持った低価格のスマートフォンを武器に中国のメーカーが台頭してきた。

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