物流が変われば
日本の農業は強くなる

インタビュー パンガジ・ガルク氏


WEDGE Infinity編集部

WEDGE REPORT

ビジネスの現場で日々発生しているファクトを、時間軸の長い視点で深く掘り下げて、日本の本質に迫る「WEDGE REPORT」。「現象の羅列」や「安易なランキング」ではなく、個別現象の根底にある流れとは何か、問題の根本はどこにあるのかを読み解きます。

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来日25年のパンガジ・ガルク氏。陰りが見える日本に対して、発破をかけたいと話す。日本を活性化するためのアイデアを聞いた。

ーー来日したきっかけについて教えてください。

ガルク 私は、インド人です。無電源で72時間(20度〜マイナス25度)を保つ温度記憶保冷剤「アイスバッテリー」を製造、販売するアイ・ティ・イー(東京都千代田区)という会社を2007年に、東京で設立しました。東京で起業したのは、日本が私にとって憧れの国だったからです。

パンガジ・ガルク氏

 日本は第二次世界大戦で荒廃したあと、アメリカに次ぐ世界第2位の経済大国に登りつめました。その原動力こそ、モノ作りにあると思いました。「日本のモノ作りを学ぶために、いつか日本に行ってみたい」。そんな思いを学生時代から抱き続け、1988年に来日しました。まさに念願が叶った瞬間でした。

 その後、神戸製鋼でエンジニアとして働き、安川電機、インテルと移りました。インテルに在籍していたときに半導体の冷却技術に携わることになり、ここでの経験が起業につながりました。

ーー今の日本に対してどのような活性化策を考えていますか?

ガルク まず、日本の物流への提案です。私が製造販売している「アイスバッテリー」は、最初に言った通り、72時間無電源で、20度からマイナス25度までの温度を保つことができます。この利点が評価されて、一部の鉄道、航空貨物輸送に使われはじめています。

 現在、低温輸送の多くはトラックで行われています。しかし、トラックを使えばCO2の排出が増えますし、現在トラック運転手の高齢化が進んでおり、近い将来は人手不足から、輸送費が上昇することが予想されます。また、鉄道を使う場合でも、多くの電力を消費することになります。

 そこで提案したいのが、冷蔵コンテナの冷却材としてアイスバッテリーを使うことです。20フィートコンテナを使用した場合、既存のものに比べてアイスバッテリーだと約70%電力消費を削減することができます。

ーー具体的に何を輸送するのですか?

ガルク 日本では、もう何年も前から農業の効率化、国際競争力の強化が言われています。TPP交渉が進むなかで、その必要性はますます高まっているといってもよいでしょう。狭い国土のなかで効率的な農業を行っていくことは簡単ではありません。それでも、日本の高品質の農産物は、世界的に高い評価を得ています。私は、日本の農業が産業化する可能性は多いにあると思っています。

 しかし、その障害となっているのが、物流だと考えるのです。農産物、特に青果物を運ぼうとすると、どうしても高い物流費が必要となります。ロットの少ない小規模の農家であればなおさらです。低コストで生産する努力をしたとしても、物流コストによって、それも台無しになってしまう。この物流コストを低減することにアイスバッテリーが役立つことができるのではないかと考え、その提案を各地で進めているところです。

 農業が産業として成り立てば、人口減少が続く日本の地方にとっても喜ばしいことだと思います。もっといえば、日本に限らず、私の母国インドでもそうですし、他のアジアの国でも大都市への人口集中が続いています。その一方で、農村から人が減っています。

 国連が8月に発表した予測によれば、2050年に世界人口は97億人、2100年には112億人になるとのことです。そうすると、ますます食料供給の問題も課題になってきます。農業を活性化することは世界にも求められていることなのです。

  
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