習近平の航空機”爆買い”
チタン業界に漂う軍事産業の影

日本が米国軍用機の「最良のお得意さん」? 


中村繁夫 (なかむら・しげお)  アドバンスト マテリアル ジャパン社長

1947年生まれ。レアメタル専門商社・アドバンスト マテリアル ジャパン(AMJ)社長。新著に『レアメタルハンター・中村繁夫のあなたの仕事を成功に導く「山師の兵法AtoZ」』(ウェッジ)。

山師の手帳~“いちびり”が日本を救う~

レアアースやレアメタルを生業にして40年近くも「山師」の世界で生きてきた。生き残れたのは「いちびり精神」があったからだ。「いちびり」とは「人のしないことをやるお調子者」のことである。中国人やユダヤ人やアングロサクソン人とのビジネスに揉まれてきて悟ったことは「人のしないことをやる」べきだということである。その山師しか知らない世界を時には大胆に、時にはもったいぶりながら披露する。

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2015年の国際チタン会議が米国フロリダ州のオーランドで10月5日から7日まで3日間にわたって開催された。毎年10月の上旬に行われる会議だが、今回は世界各国から約750人前後が参加した。今年の話題は航空機産業分野のチタン需要への期待で盛り上がった。

米フロリダで行われた国際チタン会議

習近平国家主席が
ボーイング旅客機を「爆買い」した背景とは?

 先月9月の習近平氏の訪中時にボーイング社に対して習近平氏が300機の旅客機を発注したニュースや中東における空爆の増加から航空機と防衛産業の景気高揚への期待も会場のあちこちで話題になっていた。

 さて、世界のチタン市場はリーマンショック以降、一時期落ち着きを取り戻したが、昨年の2014年までの需要は3年間連続で停滞していた。しかし、今後は新型航空機の納入が本格的に始まるのでチタン需要は拡大基調に転換することは確実である。

 今後20年間で生産される航空機は3万9780機と推計されており、航空機需要だけでも10年間で新たに40万トン以上のチタンを消費すると見込まれるから期待が集まるのも当然である。年間のチタン製品の年間の世界需要量は大体10万~12万トンくらいであるから新規の航空機需要が4万トンになるというのは3割から4割の拡大が期待できると云う話なのだ。

 まずは会場の活気の原因である習近平国家主席の派手なパフォーマンスから話題を分析してみたい。習近平氏は去る9月23日、米西部ワシントン州の米航空機大手ボーイングの工場を訪問し、なんと旅客機300機の発注で合意するなど中国の得意の「爆買い」をアピールした。

 ただでさえ中国の景気が減速する中で旅客機を300機も発注するなどの大盤振る舞いは常識では考えられないが、チタン業界では航空機分野の本格的回復が期待されているから盲目的に歓迎されているのだ。景気が悪化すれば旅行客は減少するから普通は旅客機の注文は減って当たり前である。

 今回の発注は380億ドル(約4.5兆円)規模と云われているがチタンの使用量は一機当たり60トンに及ぶから300機になると何と1万8000トンとなり、2014年の米国のチタン材の需要が2万7000トンだから今回の発注量がいかに多いかが分かるだろう。

 ところが、こうした発表にもかかわらずボーイング社の株価は急落しており、市場の反応はみられなかったのは中国得意の白髪三千丈のブラッフだと反応したのかも知れない。

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「山師の手帳~“いちびり”が日本を救う~」

著者

中村繁夫(なかむら・しげお)

アドバンスト マテリアル ジャパン社長

1947年生まれ。レアメタル専門商社・アドバンスト マテリアル ジャパン(AMJ)社長。新著に『レアメタルハンター・中村繁夫のあなたの仕事を成功に導く「山師の兵法AtoZ」』(ウェッジ)。

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