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2015年10月21日

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村中璃子 (むらなか・りこ)

医師・ジャーナリスト

医師・ジャーナリスト。東京都出身。一橋大学社会学部・大学院卒、社会学修士。その後、北海道大学医学部卒。WHO(世界保健機関)の新興・再興感染症対策チーム等を経て、医療・科学ものを中心に執筆中。京都大学大学院医学研究科非常勤講師も務める。

 「僕は横田先生とは専門が違うので考え方が違うのかもしれませんが、ワクチン外来に来たからといってその患者さんが全員ワクチンのせいで病気になったと考えるのはさすがにどうかと……」と言葉を濁らせる横浜市立大学の医局員もいる。

 一般の人は学会の理事長や会長、有名医大の教授などと聞けば、彼らの意見が学会や医局を代表する意見であるという印象を持つかもしれない。しかし、理事長選や教授選は政治の世界でもある。また、学会発表は会費を払い、資格さえあれば誰でも行えるので、学会発表しただけでは科学的信頼性があるとも言えない。

 研究内容が科学的に意味のあるものとして初めて認められるのは、データを積み上げ、仮説を立証し、査読者のいる医学雑誌にそれが受理された時である。「STAP細胞はあります」と涙ながらに主張しても、立証できなければ科学的意味がないことについては読者もよくご存じだろう。

 HANSの特徴は「数多くの症状があり、それが出たり入ったりすること」。1人で100を超える症状が現れる症例もあるという。

 しかし、例えば、世界の精神医療のスタンダードDSM-Ⅳ(米国精神医学会発行の「精神障害の診断・統計マニュアル」第4版)に掲載されている身体表現性障害の症状も実に多彩だ。

 異なる部位の体の痛み、下痢・嘔吐・便秘などの消化器症状、月経不順を含む性的症状、運動麻痺・平衡障害・麻痺・脱力・けいれんなどの転換性障害、記憶障害などの解離性症状、意識喪失・幻覚などの偽神経学的症状などがあり、HANSで中枢神経(脳や脊髄のこと)に由来する症状として挙げられているものとよく重なる。

 DSM-Ⅳが出されたのは94年。06年に子宮頸がんワクチンが登場する10年以上前から、このような症状の患者はいたことがわかる。

「漢字を書く脳領域」だけに起きる障害?

 「ワクチンのせいで漢字が書けなくなってしまったという子がよく紹介されますが、あの子はきれいなひらがなで言いたいことを全部書けていますよね。言語や文字をつかさどる脳領域の障害はあっても、漢字をつかさどる領域だけの障害が起きるというのは極めて稀です」と小児神経を専門とする医師は言う。

 確かに、子宮頸がんワクチンが漢字をつかさどる脳領域だけを選択的に障害 することは考えがたい。

 また、高次脳機能障害だとして論じられることの多い他の症状についてもこうコメントした。「簡単な計算もできないという症例がたくさん出てきますが、この子たちはみんな時間がかかっても全問正解しています。ワクチンを打った後に親の名前が分からなくなり『お母さんはどこ?』と親に向かって言ったなどという少女も複数出てきますが、それを『ワクチンで認知症になった』などという単純な議論で片づけてよいものか……」。

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