WEDGE REPORT

2015年10月21日

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村中璃子 (むらなか・りこ)

医師・ジャーナリスト

医師・ジャーナリスト。東京都出身。一橋大学社会学部・大学院卒、社会学修士。その後、北海道大学医学部卒。WHO(世界保健機関)の新興・再興感染症対策チーム等を経て、医療・科学ものを中心に執筆中。京都大学大学院医学研究科非常勤講師も務める。

 しかし、ワクチン後の少女には「心因性」と言われて傷つき、怒り、症状が悪化するケースも多い。そんな少女たちにはどんな精神科医よりも「ワクチンによる脳神経障害」だと断じ、一緒に戦ってくれる医師たちが「いい先生」なのだろう。そして、彼らにすがる少女たちもまた「新しい病気を見つけた」と主張したい医師たちにとって、欠かせない存在なのかもしれない。

高齢者に使う認知症薬を
少女に使う危険性

 「16歳という処方箋を書くと61歳の間違いじゃないかって薬局から電話がかかってくることがあります」

 処方箋に記載された薬の名前はメマリー。昨年の線維筋痛症学会で衝撃を受けたのは、「十分な治験が行われておらず危険なワクチン」との主張を繰り返している西岡氏らが、10代の少女たちにメマリーやアリセプトなど高齢者の認知症治療に用いられる薬を多用していると知った時だ。

 メディアや被害者連絡会関係者を交えたセッションでは、これらの薬を少女へ保険適応するよう強く訴える意見も上がった。自費診療では負担が大きすぎるという。

 治験に合格したワクチンで薬害が起きたと訴えておきながら、思春期の患者での治験をしていない薬を用いる矛盾。なぜ、子宮頸がんワクチンは危ないが、少女たちに認知症の薬を飲ませることは安全だと思うのか。

 今年の学会で「メマリーの保険収載はうまくいきそうですか?」と西岡氏に質問すると、「もうちょっとエビデンスが欲しい。効くのは間違いないから、私は収載していいと思うがね。でも、まず厚労省がHANSを病気として認めないと。心身反応と言っているようじゃ話にならない」と返ってきた。

 認知症の薬だけではない。「免疫異常」と決まったわけではないのに、静脈に大量の点滴をする、極めて作用の強いステロイド・パルス療法や免疫グロブリン療法などを選択するのもいかがなものか。報告書や書籍によれば、これらの治療の後、症状が悪化する少女もかなりいるようだ。もし、これらの治療法が不適切で体調が悪化したのだとすれば、それこそが薬害ではないのか。

 中にはワクチン接種後、たまたまこれらの治療法が効く別の病気を発症した少女たちもいるだろう。もちろん、ワクチンのせいで病気になった特殊なケースもあるだろう。しかし、HANSの概念はあまりにも広く、〝被害者〟の数え方には疑問が残る。

 そして、こうした少女たちを苦しめるものの「正体不明さ」に乗りたがる大人たちは他にもいる。

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