ハーモニーから考える
日欧のモノづくりの差

ベルリン音楽祭2015


多賀一晃 (たが・かずあき)  家電評論家

スマート家電グランプリ審査員。主催する『生活家電.com』を通じ、家電の新製品情報、使いこなし情報他を発信中。過去、某メーカーでAVメディアの商品企画を担当、オーディオ、光ディスクにも精通。また米・食味鑑定士の資格を有する。水、米、パン、珈琲、お茶の味に厳しい。

家電口論

元大手家電メーカーでエンジニアをしていた筆者による、家電製品、家電業界の辛口批評。(画像:istock)

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Made in Japanはスゴいと言いながらも、家電は海外メーカーに押されています。例えば掃除機。キャニスター型は兎も角、スティック型掃除機はエレクトロラックス、ダイソン、ロボット掃除機はiRobotという海外メーカーの後塵を拝していると言ってもイイでしょう。なぜでしょうか? IFA取材の後、骨休めと称して行ったベルリン音楽祭で気付くことがありました。

日本のオーケストラと海外のオーケストラ

 海外のオーケストラに比べ、日本のオーケストラは正直感心することが少ない。あれだけ、海外の有名なコンクールで日本人が賞を取る時代になってもです。理由は、音の作り方にあると思います。海外のオーケストラは、料理に例えるとスープです。スープはいろいろな素材を混ぜて作ります。が、出来上がった味は、複雑ながら、そのスープ独特の味が出ていると思います。

iStock

 それに対し日本のオーケストラの音の作り方は、懐石料理です。いろいろな小鉢が載っており、一つ一つが主張しながら、料理を時間的に組み立てていくのですが、味は全体を通して一つの味ではなく、小鉢毎の独立味の連なりです。

 音楽の重要な要素「ハーモニー(和声)」は、いろいろな楽器の音が混じり合ったものを楽しむですから、先の表現だと同じです。

ハーモニーの決め方とスティーヴ・ジョブズ

 ハーモニーは、指揮者が決めます。演奏は楽団員ですが、方向性、音色、
指揮者は、音楽監督も務めることが多いですが、極めて特殊な職業といえます。何せ、聴衆に聴いてもらう音楽を決める最高権力者ですから。このため、自分のカラーを徹底的に出します。で、聴衆にアピール。支持を得るわけです。

 私は、薄いスマホを作るために、スティーヴ・ジョブズが取った行動を思い出しました。スマホの試作品を水槽に投げ込んだのです。当然、泡がでますよね。「まだ、隙間が残っている。薄くしろー!」ということです。結果できたのが、薄く、高性能なiPhone。

 日本でこれをやったら総スカンです。「和をもって尊しとなす」国ですからね。プロジェクト半ばまで来て、「君の気持ちは分かるんだが、こちらの意見も聞くのはどうか」と意見修正を図るわけです。仕事の進め方としてはありなのですが、これではハーモニーは出ないのです。ハーモニーは、全員が同じ気持ち、同じ方向を目指すことで初めてできますので。

 モノづくりも同じです。商品という結果が良ければイイわけで、仕事の進め方を売るのではないですから。

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「家電口論」

著者

多賀一晃(たが・かずあき)

家電評論家

スマート家電グランプリ審査員。主催する『生活家電.com』を通じ、家電の新製品情報、使いこなし情報他を発信中。過去、某メーカーでAVメディアの商品企画を担当、オーディオ、光ディスクにも精通。また米・食味鑑定士の資格を有する。水、米、パン、珈琲、お茶の味に厳しい。

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