「航行の自由作戦」では不十分

南シナ海 中国人工島問題


世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

世界の流れは、時々刻々専門家によって分析考察されています。それらを紹介し、もう一度岡崎研究所の目、日本の目で分析考察するコラム。

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新米国安全保障センター(CNAS)のフォンテイン代表が、10月22日付ウォールストリート・ジャーナル紙に掲載された論説にて、南シナ海問題は領土問題であると同時に軍事問題であり、中国の戦力投射能力強化に対処するため域内関係国との協力構築が重要である、と述べています。

中国が空港などの建設を進めるファイアリー・クロス礁(Getty Images)

南シナ海軍事基地建設で高まる中国の戦力投射能力

 すなわち、米海軍は中国が南シナ海に建設した人工島の12海里水域で航行の自由行動を実施すると報道されている(注:10月26日に実施)。しかし、対応は航行の自由作戦に限らず、それを超えて中国の戦力投射能力の強化という側面を考えるべきだ。

 訪米した習近平は南シナ海で「軍事化を追求する意図はない」と述べたがその意味は疑わしい。外務省関係者は軍事施設の存在を確認している。

 衛星写真はフィアリー・クロス環礁に軍用機が使用可能な滑走路が存在することを示している。ハリス太平洋軍司令官は戦闘機格納庫や艦艇利用が可能な水深を持つ港が建設されている、レーダーや電子戦能力も配備されるのではないかと懸念を表明した。これらは戦力投射能力の大幅な向上をもたらす。一隻の空母しか保有しない中国は、その不利を埋め合わせるために投射能力の構築を図ろうとしている。

 問題は領海紛争だけに限定されない。中国は軍事力を使う強圧外交への志向を強めており、東南アジアへの影響は甚大である。多くの西側専門家は実際の紛争の時を考えれば基地は小規模で、攻撃も容易だと言っている。しかし、紛争に当たっては、これらの島の航空機や艦船ばかりでなく、中国本土から遠く離れたこれらの島にある状況把握能力により戦力投射能力が強化される。中国は既に航行補助装備、精密レーダーやセンサーなどのハイテク装備の設置を、非軍事的なものだとして開始している。

 さらに、島が緊急事態の際に脆弱だからといって価値がないということにはならない。それは既に対抗能力を持たない係争関係国や地域の国々への中国の影響力を高めている。

 紛争が起きた場合、最初に動く側が決定的な利点を確保する。島に置かれる設備は中国の軍事作戦がそのような成功を収めることを容易にする。

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