WEDGE REPORT

2015年11月28日

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 韓国のパク・クネ大統領、中国の習近平国家主席と首脳会談はしたものの、両国との関係改善がままならない日本。一方、北朝鮮との関係は拉致問題の展望が見られず先が見通せない。「日韓文化交流会議」の委員などを務めて、東アジア情勢に詳しい小倉紀蔵・京都大学大学院人間・環境学研究科教授に日本が取るべき方策について聞いた。

大統領が言ったことがこれほど簡単に覆るのでは
世界中から信用されなくなる

 マスメディアは11月2日に実現した日韓首脳会談について安倍晋三首相が得点を挙げたという評価だったが、私はそうは思わない。パク・クネ大統領は「従軍慰安婦問題が進展しない限り日韓首脳会談はやらない」と言っていたが、日韓首脳会談を行った。米国から圧力があったのかもしれないが、大統領が言ったことがこれほど簡単に覆るのでは、世界中から信用されなくなる。

11月2日に行われた日韓首脳会談(Getty Images)

 東アジアの関係を見ていると、日本以外の各国はコロコロと立場を変える。柔軟性があるとも言えるが、逆に言うと信用できない。そういう人たちと日本はどのような外交関係を構築していけばよいのか。ここがこれから問われている。

 外務官僚が作り上げたきちっとした外交は揺るぎないものだとして、この体系を進めるのか、外交関係が首尾一貫ではなくても国の利益を追求するためにやっていくのか、どちらを選択するのかが問われている。

 安倍政権のやり方を見ていると、本来なら憲法改正が必要になるものを、一内閣で集団的自衛権を簡単に認めるなど、いままでの日本の政治のやり方を変えようとしている。急速に日本が「東アジア化」し、いままで築き上げてきた理性の体系から外れつつあるのではないか。東アジアと付き合うには、ある程度、柔軟にしないとできないことをいま学んでいる段階ではないか。

発展につながった「日本モデル」

 日本がかつて支配・侵略した東アジア(中国、韓国、台湾)は、国家としては分断されているが、産業国家としては成功している。日本が円借款や技術支援を提供したことが東アジアの発展につながったことは明らかだ。このことを上から目線で「日本が正しい」と居丈高に言うと、相手国は聞く耳を持たなくなる。相手国の立場に立ってお手伝いをしてきたことを言えばよい。「日本が協力してやる」のではなく、低姿勢で「お手伝いします」という控えめな姿勢が「日本モデル」だ。「日本モデル」として「和解」「経済」「平和」についてはきちんと概念化すべきだ。

 戦後の日本が取り組んできた東アジア諸国との和解、一番重要な経済援助、平和は堂々と言うべきだ。あまりにも反日キャンペーンに押され過ぎている。東アジアが全体的な経済発展で曲がりなりにも平和が維持されているのは、日本の控えめな働きが功を奏したことを肯定的に評価すべきだ。

 「和解」についても条約や法律の制約のある中で、できるだけ注意しながら、非常に難しいプロジェクトだったが、相手国に不快感を与えないようにして行ってきた。このことは欧米も参照すべきだ。

 韓国との関係では、「慰安婦」「徴用工」の問題で完全に応答するのは難しいが、何らかの形で応答しているという姿勢を見せないといけない。突っぱねると、後に禍根を残すことになる。

 これに対し欧州は周辺国と和解したといわれるが、それは欧州内部のことをいっているだけだ。フランスとアルジェリアなどアフリカ諸国、英国とインドやシンガポール、オランダとインドネシアなど旧植民地諸国とは歴史的和解をしていない。むしろ、フランス、英国などは支配を強め、乱暴に利用してきた。フランスはアルジェリアのサハラ砂漠や仏領ポリネシアで水爆実験を行った。その時点では現地住民は黙っていたかもしれないが、後遺症が出てくる。

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