なぜIS資金が枯渇しないのか
プーチン氏が指摘した石油密売はISの活動資金の大きなソースで、いったんは米軍の精油所などへの空爆で激減したものの、簡易の精油装置を導入して生産が急増。最近では1日5万バレル、月約50億円の密売収入を上げるようになっているという。
このため米軍がISのタンクローリーへの攻撃を強化、ロシアも同様の攻撃を開始していた。しかし米英紙によると、ISはすでに石油密売に依存しなくてもいいように支配地域の住民らからカネを搾り取る暴力的なシステムを確立、年間約10億ドル(1200億円)もの収入を得ている。
ニューヨーク・タイムズによると、ISのこのシステムはさまざまな徴税から不動産の家賃、電気・水道料金、イスラム法に違反した行為への罰金まで多岐に渡っており、米国のテロ専門家は「彼らは朝に戦い、午後には税金を徴収している」と指摘しているほどだ。
税金で言えば、ISは支配地域の出入り口に検問所を設け、物資輸送のトラックなどから通行料を徴収、イスラム国のロゴの入った受領書を発行している。ヨルダンからアイスクリームを冷凍車でイラクに運ぶ運転手は1カ月に3回、300ドルを支払っている。首都であるシリアのラッカでは、「清掃税」という名目で市場の各商店から月、7ドルから14ドルを納めさせている。
住民は電気代として月、2ドル50セント、水道料金として1ドル20セント程度を払っている。イスラム法違反の罰金も収入源となっており、例えば喫煙を見つかった男性は15回のむち打ちとともに、罰金約40ドルを支払わされたという。
ISはこうした歳入システムを作り上げることによって、空爆などの影響を最低限にとどめており、組織の資金源を断つためには、最終的に支配地を奪回して住民を解放するしか方法がない。ロシアとトルコがいがみ合い、IS包囲網に深刻な亀裂が生じている現状では、IS壊滅は遠のくばかりだ。
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