メディアから読むロシア

2015年11月18日

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小泉悠 (こいずみ・ゆう)

財団法人未来工学研究所客員研究員

1982年生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了。民間企業を経た後、2008年から未来工学研究所。09年には外務省国際情報統括官組織で専門分析員を兼任。10年、日露青年交流センターの若手研究者等派遣フェローシップによってモスクワの世界経済・国際関係研究所(IMEMO)に留学。専門は、ロシアの軍事・安全保障政策、軍需産業政策など。著書に『ロシア軍は生まれ変われるか』(東洋書店)。ロシアの軍事情報を配信するサイト「World Security Intelligence」(http://wsintell.org/top/)を運営。

 11月13日にパリで発生した同時多発テロ事件は、これまでに130人以上の死者を出し、世界に大きなショックを与えた。テロを起こしたのはイスラム過激派組織IS(「イスラム国」)と関係を持つフランス人らと見られ、当局がさらなる共犯の行方を追っている。

 もちろん、世界の紛争地域ではこれに匹敵する規模の惨劇が毎日のように発生しているにせよ、安全と見られていた先進国の首都でこれほどの規模のテロが発生したことは、米国同時多発テロ事件以降の巨大なインパクトとなった。なかでも注目されるのは、今後の国際政治に対するそれである。

モスクワのフランス大使館前に置かれた献花(Getty Images)

 IS対策としてシリアへの軍事介入を行うロシアのメディアでも、今回のパリ同時多発テロの影響については活発な議論が見られた。それも、これを好機と捉える見方が多い。

 たとえば高級紙『ヴェードモスチ』は、外交政策シンクタンク「ロシア国際問題評議会」のコルトゥノフ所長の見解を以下のように紹介している。

 コルトゥノフ所長によれば、フランスのオランド政権は、今回の事件を受けてより積極的な対外政策を示す必要性に迫られている。テロ後にフランスが開始したシリアへの空爆はそのひとつ(ただしフランスは以前からシリア空爆を準備しており、ISのテロはこれに対する「先制攻撃」であったと見られる)だが、この際、フランスはすでに軍事介入を行っているロシアとの関係を緊密化させるだろうとコルトゥノフ所長は予測している。特に偵察・諜報情報の共有や軍事行動の調整などが考えられるという。

安全保障は選り好みできない

 この種の見方はほかにも数多く見られる。国営通信社ITAR-TASS(11月16日付)は上院外交委員会のクリモフ委員長の見解として、次のように報じている。

 「同人(クリモフ委員長)によれば、今日、政治家が導かなければならない第一の結論は、安全保障は選り好みできないということだ。「西側諸国はNATOとの協力関係を維持するだけでは自らの安全を確保できない。ロシアの大統領、外務省、議会は、テロとの戦いに関する国際的協議を呼びかけてきた。特にISとの戦いに関するものである」と同人は指摘した」

 こうした識者や政策担当者の発言から見られるのは、今回のパリ同時多発テロがロシアの進める互い政策に関して追い風になりうるという認識である。

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