海外売上が5割を超した電通
デジタルでは負けられない

今年も28社をM&A


中西 享 (なかにし・とおる)  経済ジャーナリスト

1948年岡山県生まれ。1972年共同通信社に入社、経済分野を取材し編集委員などを経て2010年に退職し、現在は経済ジャーナリスト。

WEDGE REPORT

ビジネスの現場で日々発生しているファクトを、時間軸の長い視点で深く掘り下げて、日本の本質に迫る「WEDGE REPORT」。「現象の羅列」や「安易なランキング」ではなく、個別現象の根底にある流れとは何か、問題の根本はどこにあるのかを読み解きます。

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テレビや新聞など国内メディア向け広告を中心にビジネス展開してきた電通が、昨年は25社の海外の企業を買収、今年も1月から11月までに28もの企業を買収し、一気呵成にデジタル分野を重視したグローバルネットワークを確立しようとしている。数年前まで国内市場の比率が高かった電通だが、すでに売上総利益の半分以上を海外で稼ぐまでになっている。電通の買収戦略について担当の伊藤誠司執行役員にインタビューした。

Q 海外の企業買収が加速したきっかけは

A 電通は過去50年間、海外の事業展開をやってきたが、必ずしもうまくいっていたわけではなかった。主として日系クライアント対応のために世界の主要都市に拠点を展開していたが、ローカルの一級の人材を雇うことが難しく、地域、拠点によっては必ずしもクライアントの満足を得られていなかった。
転機となったのが9年前に米国プロバスケットボールNBAのChicago Bulls(シカゴ・ブルズ)でマイケル・ジョーダンと一緒にプレーしていたティム・アンドレー(現在、電通本社の取締役専務執行役員)をヘッドハントしてからだ。

アンドレー氏

 2006年に電通アメリカの社長として入社、彼がM&Aを積極的に手掛けてノウハウを蓄積した延長で、2012年7月に当時世界8位だった英国の広告会社「イージス・グループ」の買収を発表した(13年3月に買収を完了、買収額は約4000億円)。電通ももともとはメディアからスタートした会社だったので、イージスとはケミストリー(相性)が合った。

Q デジタル分野での買収が目立つがその狙いは

A 我々の業界ではいまデジタルの能力をどれだけ持つかが競争のコアとなっている。日本の広告市場ではテレビの比率が30%強を占めるが、英国などではテレビがインターネットに抜かれている。これからはデジタルとテレビ、新聞など既存のメディアをいかに組み合わせてキャンペーン効果を最大化するか、そこに消費者の気持ちをつかむようなコンテンツをどう組み入れていくかがますます重要になっていく。

 世の中はデジタルが浸透・進化してきたことで非常に複雑化すると同時に、利用者の消費行動データなどマーケティングの高度化に必要な多様なデータを取得することができるようになった。こうしたデータを使いながらクライアントと一緒になって、どうすれば一番効率的にモノやサービスを売ることができるか、という競争になっている。そのためのテクノロジーもどんどん進化しているし、デジタルのメディアそのものも広がってきている。モバイルメディア、SNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)、YouTube(ユーチューブ)、Netflix(ネットフリックス)など新しいサービスが日進月歩でマーケットに出てきているので、ほかのメディアと組み合わせてキャンペーン効果を最大化し、可視化された効果指標をもとにPDCAを高速で回していく競争がますます激化していくことになる。

 日本ではテレビの存在が大きいので売上総利益に占めるデジタル事業構成比はそれほど高くはないが、海外事業を統括している電通イージス・ネットワーク(DAN)でみると、デジタル事業構成比は14年度に43%、15年度上期に46%となっており、着実にデジタル比率が高まっている。

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著者

中西 享(なかにし・とおる)

経済ジャーナリスト

1948年岡山県生まれ。1972年共同通信社に入社、経済分野を取材し編集委員などを経て2010年に退職し、現在は経済ジャーナリスト。

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