中国も匙を投げた台湾総選挙

台湾総統選挙、民進党の「歴史的大勝」なるか


野嶋 剛 (のじま・つよし)  ジャーナリスト

1968年生まれ。朝日新聞入社後、シンガポール支局長、台北支局長などを経験。著書に『ふたつの故宮博物院』(新潮選書)、『ラスト・バタリオン 蔣介石と 日本軍人たち』(講談社)、『映画で知る台湾』(明石書店)など。

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4年に一度、行われる台湾の総統選挙には、いささか、常軌を逸した熱気がある。投票率はいつも7割を超える。一種のお祭りであり、選挙ビジネスと言われるような、選挙集会の出し物や音楽、屋台などを含めた膨大な経済効果を生む。台湾の選挙は寒いときに行われることが多い。そうなると、南方の台湾といえども、夜はかなり冷え込んでくる。

 選挙集会の取材は、完全防寒の出で立ちで臨み、現場では、屋台で売っている熱々の「杏仁茶(アーモンド茶)」を飲みながら、生ニンニクのついた「香腸(中華ソーセージ)」をかじって暖をとりながら、熱い戦いを観戦するのが台湾選挙の楽しみ方である。

熱気のない総選挙

 しかし、今年1月16日に行われる総統選は、肝心の熱気がそこまでは感じられない。その理由は、すでに大勢が判明しているからに外ならない。

民進党蔡英文候補(Getty Images)

 民進党候補の蔡英文の勝利がほぼ確実で、同日に行われる立法院選挙でも、民進党は史上初の単独過半数をうかがっている。この流れは、突発的な大事件でも起きない限り、覆らないだろう。「歴史的会談」と大騒ぎになった昨年11月の馬英九総統と習近平・国家主席の中台トップ会談も、民進党有利、国民党劣勢の選挙情勢には、ほとんど影響を与えることはできなかった。

 いまは、民進党の勝ち方が、「歴史的」と呼べるほどの大勝になるのかならないのかという点に、台湾社会の関心は集中している。

 ここまでの世論調査の結果は、かなり衝撃的である。台湾の世論調査は投票日前2週間で打ち切られるが、蔡英文の支持率は終止、40%以上を維持し、20%ほどで頭打ちする国民党の朱立倫を20%前後引き離している。

 第三の候補で主張は国民党に近い親民党の党首・宋楚瑜の支持率がかえって伸びており、国民党が分裂して民進党の陳水扁に敗北した2000年の総統選挙に似た構図になっている。2000年と違うのは、陳水扁が得票率39%で当選した「漁夫の利」だったのに比べて、今回はこのままの世論調査を反映したと仮定した場合、蔡英文の得票率は過半数どころか、過去で最高得票率を得た08年の馬英九の58%までも超えてしまいかねない可能性が生まれている。

 過去の選挙と比べても、世論調査でもここまで差が開いたことは珍しく、リードしている蔡英文が冷静沈着、優等生で知性派というキャラクターで安全運転に徹していることもあり、盛り上げ役がいないのである。

 もともと民進党の実力は、総統選においては、だいたい40〜45%であり、国民党の固い地盤を突き崩すには、04年のときのように現職という有利さと、投票日前日の陳水扁への銃撃事件のような、何らかの「加点」が必要であるということが、伝統的な台湾選挙観察の基本条件だった。

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著者

野嶋 剛(のじま・つよし)

ジャーナリスト

1968年生まれ。朝日新聞入社後、シンガポール支局長、台北支局長などを経験。著書に『ふたつの故宮博物院』(新潮選書)、『ラスト・バタリオン 蔣介石と 日本軍人たち』(講談社)、『映画で知る台湾』(明石書店)など。

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