世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年12月9日

 中台首脳会談を前にした11月5日付の台北タイムズは、社説で、再選時の公約に違反し、レガシー作りに余念がない馬英九総統を批判しています。

台湾総統馬英九(Getty Images)

“中国の指導者には会わない”と述べたにも関わらず…

 すなわち、中台両岸関係は、政権担当者にとって、台湾の安全保障、主権、国家の尊厳が絡む極めてセンシティブかつ慎重な評価を要する案件である。

 それゆえに、近々馬英九総統が習近平主席と会談するという報道は、台湾の人々を唖然とさせている。2012年の再選以来、馬英九は自身のレガシーを残したいという野心を隠さずにしてきており、習近平と会談したいということも何度も公言してきていた。だがこれまで、台湾総統で中国の指導者と会談するという間違いを犯したものはいなかった。というのも、それはオリーブの枝を差しのばすことと解釈されるためである。

 馬英九は2011年11月18日に「再選した場合、中国の指導者には絶対会わない」と述べていたし、中台首脳会談をするとしても「台湾がそれを必要とし、国民が支持し、議会がプロセスを監督する場合に限る」とも言っていた。今回の首脳会談に際し、馬英九は台湾国民の同意を得たのであろうか。

 住宅価格の急上昇、労働市場の悪化、世帯収入と輸出の減少により、台湾経済は芳しくない状態にある。労働省の統計によれば、10月の一時解雇者数は昨年2月から最高水準に達しているとされ、失業率も7月の3.82%から8月までに3.9%に達している。また、彭淮南中央銀行総裁は、今年のGDP成長率が1%を超えるのは難しいと述べている。こうした中でも、馬英九の関心は、経済対策よりも、習近平と握手するということに向けられている。

 国民党は、首脳会談は両岸関係の発展に資すると評しているが、台湾国民は馬英九の不透明な政策過程と水面下で行った決定に、軽蔑と反発を示している、と述べています。

出 典:Taipei Times‘Ma’s sly effort to slip into history’(November 5, 2015)
URL:http://www.taipeitimes.com/News/editorials/archives/2015/11/05/2003631705

*   *   *

 上記は、中台首脳会談を唐突に決定した馬英九総統を非難する台北タイムズの社説です。

 本社説は、馬英九総統はこれまで中台首脳会談が開催される条件として「台湾がそれを必要とし、国民の支持があり、議会がそのための手続きを監督する」という3つの要素を挙げてきたが、今回それらはすべて無視されたと非難しています。

 これまでの経緯から言えば、馬英九は、昨年9月の北京APECの会合に参加し、習近平と会談したいとの希望をもっていましたが、中国としてはAPECという国際会議の場で台湾のリーダーに会うことは台湾を一つの「国家」として扱ったと受け取られる可能性があるため、これを断りました。その後、中台首脳会談の設定が表面化したことはありませんでした。

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