「世界初の人を乗せられるドローン」
中国企業が「嘘」の発表

「最もエキサイティングな発明」という賞賛が一転


土方細秩子 (ひじかた・さちこ)  ジャーナリスト

ボストン大学コミュニケーション学部修士課程終了、パリ、ロサンゼルスでテレビ番組製作に携わり、1993年より米国でフリーランスのジャーナリスト活動を行う。

WEDGE REPORT

時間軸の長い視点で深く掘り下げて、世界の本質に迫る「WEDGE REPORT」。「現象の羅列」や「安易なランキング」ではなく、個別現象の根底にある流れとは何か、問題の根本はどこにあるのかを読み解きます。

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今年のCESで最も話題を集めたブース発表のひとつが、無名の中国のドローンメーカーによるものだった。1月6日に行われた記者発表で、EHang社は「世界初の人を乗せられるドローン」の映像を展示、翌日米メディアの中にはトップニュースとしてこれを取り上げたところもある。 

「人が乗れる」と注目されたドローン

 ビデオ映像のナレーションでは「EHang184は最も安全でスマートかつエコフレンドリーな、低空飛行用の自動運転航空機で、人の短距離移動を目的としている」と語られている。映像の中でこの人搭載型ドローンは大自然の中や都市上空を飛行しているが、実はこれはすべてCGによる「やらせ」だったことが発覚した。

 元々UA (Unmanned Aircraft=無人機)は車の自動運転よりも長い開発の歴史を持つ。一時はボーイング、ノースロップ・グラマンなども開発に乗り出し、カリフォルニア州にあるアエロバイロンメント社ではソーラーパネルを搭載したUAの実験飛行まで行った。

 結局、現時点でUAは実用化されることなく、ドローンへと姿を変えて消費者市場に登場しているが、開発の歴史を考えれば人が搭乗できるドローンというのは「なぜこれまで誰も発表しなかったのか」が、不思議に思えるほど。アマゾンなどは独自の「デリバリー専用ドローン」を開発しており、数十キロの荷物を運ぶドローンはすでに存在するのだ。

CESで「最もエキサイティングな発明」
という賞賛が一転

 UAは車の自動運転と比べると、地上の交通、という障害がない分開発は容易でもある。もちろん既存の航空法など、様々な規制をクリアする必要はあるが、人を乗せたドローンが自由に行き来できるならば、「空とぶ自動車」として人々の通勤や移動の足として大きな可能性がある。しかも自動運転で目的地まで勝手に乗り物が人を運んでくれるのだ。CESで「最もエキサイティングな発明」と賞賛されたのももっともなこと。

 それが全くの嘘だった、と露呈し、EHang側も「空を飛んでいる映像はCGだが、ビデオの中で見せた人が乗り込んで空中をホバリングしている映像は本物」との苦しい釈明を行う羽目になった。しかし空中ホバリングは地上わずか数メートルのところを10秒ほど。都市上空を飛ぶのとは大違いである。

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著者

土方細秩子(ひじかた・さちこ)

ジャーナリスト

ボストン大学コミュニケーション学部修士課程終了、パリ、ロサンゼルスでテレビ番組製作に携わり、1993年より米国でフリーランスのジャーナリスト活動を行う。

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