世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年1月20日

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対象がすり替わった“反腐敗闘争”

 英エコノミスト誌の解説記事が、習近平政権が「反腐敗闘争」を続け、言論統制を強めているが、これは今や中国政治の「新しい常態」ともいうべき現象を呈していると述べています。

 「虎も蠅もたたく」とのスローガンのもとに始まった「反腐敗闘争」はそろそろ終焉に向かうのか、と想像されていましたが、実体は対象を変えて続いており、その対象が国営企業幹部、地方幹部、ソーシャルメディアなどに広がっていると言います。

 内政面では、胡錦濤時代には、「和諧社会」などというスローガンが見られたように、政敵を言論抑圧で追い詰めることはそれほど多くはありませんでした。習近平体制下では、敵を抑圧することが常態となったようであり、これはエコノミスト誌の指摘する通りです。

 習近平は党内に「小組」などをつくり、そこを通じて権力を固めてきました。しかし、他方「反腐敗汚職キャンペーン」をつうじて多くの政敵をつくりだしたことは、今後、習指導部に対する根強い不満・反発を生み出す要因ともなり得ます。

 とくに近年、中国でも広範囲に使用されるようになったソーシャルメディア、ネットなどを規制する新たなガイドラインがつくられ、「噂を広める」ことを規制するようになってきました。「噂を広める」とは、一体何を意味するのでしょうか、定義が曖昧なことが一大特徴です。

 これまでのところ、中国共産党一党支配の正統性の最大のよりどころは、経済成長にあった、と見ることができます。その点では、最近の経済状況の減速や悪化は、党への不満の浸透、拡大の大きな原因となるものです。これを習体制は「新常態」の言葉を使い、言論統制によって乗り切ろうとしていますが、下手をすると政権不安定化の悪循環に陥る可能性があります。

 例えば、最近の中国の諸都市における大気汚染の状況一つを取ってみても、これらを適切に処理できない状況が続けば、大きな社会不満鬱積の火種になるでしょう。

  
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