WEDGE REPORT

2016年1月9日

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ジョン太郎 (じょん・たろう)

現役金融マン

大手銀行入社後、日系・外資系の様々な金融機関で、商品開発や戦略企画などの要職に就く。投資信託や不動産ファンド、ヘッジファンド、機関投資家の自己資金運用など様々な分野で投資・運用ビジネスに携わり、株式・債券・為替・REIT・不動産・コモディティ・デリバティブ等、多種多様な金融商品に精通。2005年より、ブログ「ジョン太郎とヴィヴィ子のお金の話」を開設。投資・運用・金融・経済など、お金にまつわる様々なトピックをわかりやすく親しみやすい言葉で解説し、人気を博している。近著に「外資系金融マンがわが子に教えたい「お金」と「投資」の本当の話」。そのほか、マネックス証券の「マネックスラウンジ」にてコラム「お金の相談室」連載中。著書に「ど素人が読める決算書の本 第2版」「ど素人がはじめる投資信託の本」(いずれも翔泳社)がある。http://jovivi.seesaa.net/

 

 2016年の金融市場は波乱の幕開けとなった。世界中の株式市場で連鎖的な下落が続き、世界の主要株式市場は7日木曜日までに5〜10%下げた。

 今回の世界的な株価下落のきっかけは米国だったように思う。昨年12月30日、31日と値を下げて1年の取引を終えた米国株市場の流れを受けて、投資家心理は不安状態で年初の取引を迎えた。もともと、昨年初から高値警戒感と割高感があり、ドル高による米国企業業績に対する懸念、米国利上げの影響が懸念されていたところに、この年末の米国株市場下落があったのだ。さらには、中東の地政学リスクの高まりが加わった。年明けにサウジアラビアがイランとの国交断絶を発表。イスラム教宗派対立の激化を象徴するこのニュースで緊張は一気に高まった。

うなだれる中国の投資家(GettyImages)

またしても主役は中国

 そして今回の世界的な株価下落の主役はまたも中国だった。実際、8日に中国が人民元レートの切り上げとサーキットブレーカーの停止を実施すると、日本を除くアジア株式市場は概ね上昇に向かい、欧州株市場も前日比プラスから取引を開始した(ただ、この原稿を執筆している日本時間8日夜の時点では上昇幅は小幅になり、前日比マイナスとなる市場も出始めた)。

 2016年の年が明けると、中国政府は再び人民元切り下げを行った。昨年末からの米国株市場の下落で投資家心理が不安でいっぱいの中、昨年8月の人民元切り下げ後の世界的な株価下落や中国からの資本流出、民間のドル建て対外債務の返済負担増を想起させる人民元切り下げは投資家心理を一気に冷やした。さらに、新たに導入されたサーキットブレーカー制度がまずかった。 

 サーキットブレーカーは、株価の急激かつ大幅な変動を防ぐための制度だ。中国では4日から新たに導入され、基準株価指数が5%変動したら15分間すべての取引を中断、7%変動したらその日の取引を打ち切り、というもので、中国株のボラティリティの大きさを考えれば容易に発動してしまうであろう設定の甘過ぎる制度という懸念が多かった。案の定、制度導入当日の4日からいきなり7%の下落でサーキットブレーカーが発動、全取引が打ち切られた。

 ただでさえ、中国株市場では昨年、株価が大きく下落する中で各社が自社の株式の取引を停止する掟破りとも言える措置を取り、市場を大きく混乱させた。株価が大きく下落する中で取引が停止されれば、保有株式を現金化することも現在の価格を知ることもできなくなり、投資家に大きな恐怖を与える。取引が再開されれば一気に売りが殺到することが予想されるため、いつ取引が再開されるかも分からず、投資家心理は不安一色になる。こうした事態が昨年大きな混乱を招いたにも関わらず、今回の措置がとられたのだ。

 昨年の取引停止は何千もの銘柄で発生したが、あくまでも各社が言わば勝手にやったものであり、中には取引が継続された銘柄もあった。ところが、今回は違う。市場の制度として、全ての銘柄の全ての取引が打ち切られるという制度が導入されたのだ。そして、制度導入当日にいきなりサーキットブレーカーが発動し、投資家心理が最悪の状態で、昨日7日には世界的な株安の連鎖の中で中国株市場が開き、わずか30分弱の間にサーキットブレーカー発動前に換金してしまおうという売り注文が殺到し、値下がり幅をみるみるうちに大きくしていき、あっという間に基準株価指数はサーキットブレーカー発動条件の7%下落に達し、全ての取引が打ち切られた。

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