WEDGE REPORT

2016年1月22日

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 シリアの内戦終結を目指した和平協議が25日からジュネーブで始まるが、早くも「失敗確実」(軍事専門家)との見方が強まっている。その理由はアサド政権がロシアの軍事介入によって完全に息を吹き返し、退陣が取り沙汰されていたアサド大統領の自信と強気が復活したからだ。

ロシア軍の空爆により破壊されたアレッポの市街地(Getty Images)

プーチンの本気度の違い

 米軍の制服組のトップであるジョセフ・ダンフォード統合参謀本部議長は20日、弱体化していたシリアのアサド政権がロシアの軍事介入によってその立場が改善され、反体制派から占領地の一部を奪回したと述べ、政権が立ち直ったとの認識を示した。

 アサド政権はロシアが昨年の9月30日に介入する前は、北西部の大都市アレッポなどで反体制派に押し込まれ、崩壊も近いという憶測が出るほどだった。しかし、ロシア軍はイスラム過激派「イスラム国」(IS)を攻撃するといいながらも、実際にはアサド政権に敵対する反体制派を集中的に空爆、戦況を政権軍優位に一変させた。

 「シリア人権監視団」によると、ロシアの空爆でこれまでに、子供や女性を含む民間人1000人以上、反体制派の戦闘員1141人が死亡、ISの戦闘員も893人が殺害された、という。空爆下からの住民の証言などによると、ロシアの攻撃は民間人の巻き添えを考慮していない。戦闘員を殺害する効果も大きいが、それだけ民間人が巻き込まれる被害が増えている。

 米主導の有志連合は昨年8月以降、イラクとシリアのIS拠点に対する空爆を続け、これまでに9500回以上出撃し、3万発を超える爆弾を落としているが、民間人の巻き添えを恐れて、兵器や戦闘員だけを狙うようにしているために効果が小さい。軍事アナリストは戦争に対する「プーチン(ロシア大統領)の本気度がオバマ(米大統領)と違う」と指摘している。

 反体制派はロシアの空爆を恐れて一部はトルコなどに逃れており、これに伴って政権軍が北部、南部など各地の前線で進撃、北部のラタキア県のトルコ国境地帯から反体制派を一掃、3年前から占領されていた町サルマを最近奪回。アレッポでも失地を回復しつつある。

 反体制派にとって打撃なのは、ロシア軍機がトルコと反体制派の拠点を結ぶ補給ルートをつぶしたことだ。これによって反体制派への食料や補給物資、人員の補充が入らなくなった。特に政権軍の戦車攻撃に有効だった対戦車ミサイルの補充ができないことが反体制派にとっては痛い、という。

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