欧州への移民流入は歴史的必然か


世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

世界の流れは、時々刻々専門家によって分析考察されています。それらを紹介し、もう一度岡崎研究所の目、日本の目で分析考察するコラム。

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英フィナンシャル・タイムズ紙のギデオン・ラックマン主席外交論説委員が1月11日付同紙に、欧州への移民の流入は止めようがないという論説を書き、この問題を見る歴史的な視点の提供を試みています。

ハンガリーからドイツを目指す難民たち(iStock)

歴史的逆転起こる欧州

 18世紀、19世紀には欧州人は世界に植民した。今度は世界が欧州に植民しつつある。背後には大きな人口動態がある。シリアの戦争が終わってもこの問題が長く欧州を悩ませることになる大きな力が働いている。

 欧州は豊かで高齢化し、人口は停滞している。対照的にアフリカ、中東、南アジアの人口は若く、貧しく、急速に増大している。帝国主義が頂点にあった1900年には欧州諸国は世界人口の25%を占めていた。今日、EUの5億の人口は世界人口の7%である。対照的にアフリカの10億以上の人口は2050年までに25億となる。

 欧州への移民は歴史的傾向の逆転を意味する。植民地時代、欧州は人口による帝国主義を実践した。北米と豪州では原住民は抑圧され殺害され、大陸全体が欧州の出先となった。欧州諸国は世界中に植民地を作り、移民を送り出した。同時に、何百万の人間がアフリカから新世界に奴隷として送られた。

 欧州人は世界を植民する際、「移民の鎖」を通じてこれを行った。つまり、アルゼンチンや米国といった新たな国に出た家族の一員がニュースとカネを家族に送ると、程なくその他の家族も移住することになる。今日、この鎖が逆方向に動いている。シリアからドイツへ、モロッコからオランダへ、パキスタンから英国へ。それに、船便による手紙の時代ではない。フェイスブックとスマホの時代である。

 英国、フランス、オランダのような国は過去40年に著しく多民族化しており、英国のように移民を制限すると約束した政府は大きな困難に直面している。EUの立場は、難民申請は出来るが「経済難民」は本国に送還するというものである。幾つかの理由でこの政策は流入を止めることにならないであろう。第一に、戦争や国家破綻に苦しむ国の数が増えている。第二に、「経済難民」とされた者の大半は実際には欧州を出ていない。ドイツで難民申請を拒否された者のうち30%が自由意思で出国したか、強制的に退去させられたに過ぎない。第三に、多くの移民が「家族再会」の権利を獲得すると継続的な移民流入を確実なものとする。

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