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2016年2月6日

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村中璃子 (むらなか・りこ)

医師・ジャーナリスト

医師・ジャーナリスト。東京都出身。一橋大学社会学部・大学院卒、社会学修士。その後、北海道大学医学部卒。WHO(世界保健機関)の新興・再興感染症対策チーム等を経て、医療・科学ものを中心に執筆中。京都大学大学院医学研究科非常勤講師も務める。

 先週火曜日の2月2日、アメリカ・コロラド州で、流行地から帰国した男性感染者とのセックスによる感染例が新たに確認されたことを受け「ジカ熱は性感染だ」と世間がにわかに騒がしい。ジカ熱は過去にもセックスによる感染例が確認されているが、その報告は数例にとどまっていた。そのため、アメリカ疾病予防管理センター(米CDC)もジカ熱は「理論上は」セックスでうつると留保した表現をしていたが、今回の報告を受けてガイドラインに修正がかかる可能性もでてきた。

 ジカ熱の蚊に刺されること以外の感染リスクは未だ不明だ。ジカウイルスは、血液、精液、唾液のほか、乳汁や唾液中など様々な体液中に排出されることが知られているが、だからといって感染力が高いとも一概には言えない。各体液の中に感染のどの段階から、どのくらいの期間、どのくらいの量存在するのかについての詳細は分かっていないからだ。

 精液を例に取って考えてみよう。潜伏期(症状は出ていないが感染している状態)から精液中に大量のウイルスが排出されているとすれば、知らず知らずのうちにセックスを通じてパートナーにうつす可能性がある。また、症状が回復した後もウイルスが残存しているとすれば、この段階でも知らぬ間にうつす可能性がある。症状が出ている期間にのみ大量のウイルスが排出されているとすれば、流行地から帰国した男性は、ジカ熱を疑う症状のある期間のセックスを控えればよい。当初、米CDCが「理論上は」性交渉でうつるとしたのも、ジカウイルスがセックスで効率よく感染が広がっているという確証がまだないからである。

 2013年の仏領ポリネシアでのアウトブレイク時の調査では、ジカウイルスの検出率は患者の血液よりも唾液からの方が高かったという報告もある。となれば、性感染症という言葉ばかりに目を奪われるが、キスや食器の共有などを通じて感染する可能性も否定できない。

 乳汁から微量のウイルスが検出された報告もあるが、授乳を通じて母親から子供が感染した報告は無い。

 つまり、現時点でのジカ熱は蚊に刺されること以外には、どういった経路でどの程度の効率で感染するものであるのかは全くの不明であるということだ。

 時には重症化するギランバレー症候群との関連も示唆されているが、ジカ熱は一般に、罹っても症状が軽く、重症化することも死亡することも極めて稀と考えられている。

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