対談

2016年2月23日

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 前回で明らかになったのは、AIなどの新技術がもたらす格差拡大の可能性だった。消える仕事に就く人と残る仕事に就く人の、違いはどこにあるのか。お金や学歴だけでは得られない「財産」が、そこでは運命の分かれ目となってしまう。

AIとピケティの深い関係?

飯田 AIによって生じるであろう技術的失業や、賃金引き下げから逃れるために、人々はどの職種に移動するのでしょうか。正直なところ、現時点ではまったく見えません。

井上 既存の仕事が減っても新たな仕事が増えるから大丈夫なんだと断言する人もいますが、過去にそうだったからといって未来にあてはまるとは限りません。それが普遍的な経済の法則として成り立つ保証はどこにもないんです。僕の想像力では新しく生まれる仕事がイメージできないので、「遊んで暮らす社会を作るしかないんじゃないか」と言ってしまいたくなります(笑)。

飯田氏

飯田 コンピューターにはできないとされるのがデザインなどのクリエイティブ職や、コンサルティングだったわけですが、コンサルティングも代替されていくとなるとほかに何が残るのか、あるいは新たにどんな仕事が出てくるのかということですよね。

 今は肉体労働の需要が高い状況ですが、このまま賃金が上がっていけば代替も起こりやすくなります。もともと給料が安いものをITや人工知能に代替したところで、経営者にとっては意味がないからです。不況期は設備投資よりも人力でまかなってしまおうとするので、2000年代に業績を伸ばした外食チェーンなどは、限られたところしか自動化しませんでした。セントラルキッチン方式さえ導入していなかった有名チェーンもあったほどです。

井上 「イギリスで産業革命が起きたのは、イギリスの賃金が高かったからだ」というロバート・アレンの説がありますが、たしかに技術力だけみればフランスのほうが高かったんじゃないかという気もするんですよね。

飯田 発明家にはむしろフランス人が多いですもんね。

井上 けっしてイギリスが突出して技術が進んでいたわけではない。にもかかわらず、イギリスの賃金が高かったために最初の産業革命が起きたという見立ては、これからの未来を考える際にも有効な仮説かも知れません。賃金が相対的に高い職種ほど、AIやロボットに代替されやすいということになりますね。

飯田 AI革命を本気で進めたい人は、まずは人々の賃金を上げることを目指すべきかも知れないですね(笑)。その意味で今こそ真剣に考えなければならないのは、ほとんど誰も覚えていない例の「r>g」なのだと思います。

井上 わずか一年前に出た本なのに、もうすっかり話題に上らなくなりましたね。「資本収益率r」が「経済成長率g」を上回る限りは、資産家とそれ以外の経済格差は開いていってしまうという、『21世紀の資本』でのトマ・ピケティの議論ですね。

飯田 ほとんど「ラッスンゴレライ」並みに誰も口にしなくなってしまいましたが(笑)、フランスでは続編も出て話題になっていますし、日本人の飽きっぽさが際立ちます。

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