WEDGE REPORT

2016年2月15日

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 シリア内戦の暫定的な停戦を目指すことで米ロなど「国際シリア支援グループ」がこのほど合意した。しかし、その実現性をめぐって数々の疑問が浮上、失敗確実との見方が強まっている。そこにはロシアのプーチン大統領に振り回されるオバマ米大統領の優柔不断ぶりがちらつく。「シリアはオバマ政権の恥辱」(米コラムニスト)なのか。

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「穴だらけ」の合意
ウクライナ介入の再現

 今回の合意は11日、ドイツのミュンヘンでのマラソン協議で決まった。ケリー米国務長官、ラブロフ・ロシア外相ら欧州、中東などの17カ国の外相らが参加した。だが、12日未明に両外相から発表された合意の内容はいかにも急ごしらえの「あいまいな穴だらけの合意」(英専門家)だった。

 発表では、恒久的な停戦に向けて「(11日から)1週間後」に暫定的な停戦を目指すとしているが、停戦スタートの明確な日時は不明。しかもアサド政権、反体制派の双方に誰が停戦をさせるのかも明らかではない。17国が両勢力に「働き掛けを強めていく」というが、そもそもアサド政権、反体制派が合意を受け入れるのかも分からない。アサド大統領はすでに攻撃を継続する考えを示している。停戦の監視態勢もあいまいだ。

 また合意によると、過激派組織「イスラム国」(IS)やアルカイダ系の「ヌスラ戦線」などとのテロとの戦いは継続するとされており、ロシア軍、米主導の有志連合によるISへの空爆作戦の停止はない。しかし、反体制派が懸念するのはまさにこの点だ。

 ロシアのシリア介入の理屈はISや「ヌスラ戦線」などテロリストを壊滅させるためだ。しかし実際には「空爆の70%は反体制派を狙ったもの」(米当局者)で、アサド政権のテコ入れであることは明白だ。ロシアは「標的はあくまでもテロ組織」としており、この理屈で反体制派への攻撃を続行させる懸念も強い。合意から数時間後にはロシアの空爆も再開された。

 米ロはどの勢力やグループがテロ組織であるのかで意見が対立している。ロシアは米国が支援している穏健派の一部も、「ヌスラ戦線とつながりのある」テロ組織としている。米ロは両国などで作業部会を設置して空爆できる地域を特定するとしているが、ロシアが反体制派への攻撃を続ければ、反体制派が反発して停戦などの話ではなくなるだろう。

 米政権内部には、こうしたロシアのやり方を親ロシア派支援で見せたプーチン大統領のウクライナ介入の再現と見る向きも多い。プーチン氏はラブロフ外相に政治交渉をさせて事態の解決を長引かせて時間稼ぎ。その間に、戦場で攻撃を激化させ、占領地の拡大などを既成事実化し、優位性を確実にする、というしたたかな戦略だ。

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