2024年4月20日(土)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2009年11月11日

 原因は09年の全国人民代表大会前に胡錦濤が行った軍上層部の人事だ。これが従来からの軍のしきたりに合わない信賞必罰だったために制服組からの激しい反発を招いたのである。詳しい内容は『文藝春秋』5月号に書いたが、主に四川大地震で大衆の目に見える活躍をした人物を昇進させた人事への制服組の反発だった。この人事は民意を意識した胡と軍の古い体質との衝突だが、胡は板挟みに遭って頭を痛めていた。つまり習の軍委副主席を行うには最悪の環境だった。そして習の抜擢を見送った人事の背景には、習自身が今回の人事の提案を取り下げるように申し出たというのである。これが十分に考えられることは、目下、習の権力継承の基盤が緩んだという事実が見当たらないことにもある。というのも焦点の四中全会で、胡錦濤を除いて唯一発言を行っているのが習一人だからだ。 

 自らの抜擢人事を自ら取り下げる。この感覚こそ、中国というパワーが乱立する国のトップに立つ独特のバランスを習が備えていることの証なのだと考えられるのだ。

※次回の更新は、11月18日(水)を予定しております。

◆本連載について
めまぐるしい変貌を遂げる中国。日々さまざまなニュースが飛び込んできますが、そのニュースをどう捉え、どう見ておくべきかを、新進気鋭のジャーナリスト や研究者がリアルタイムで提示します。政治・経済・軍事・社会問題・文化などあらゆる視点から、リレー形式で展開する中国時評です。
◆執筆者
富坂聰氏、石平氏、有本香氏(以上3名はジャーナリスト)
城山英巳氏(時事通信社外信部記者)、平野聡氏(東京大学准教授)
◆更新 : 毎週水曜

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