イスラム国打倒は“やる気の問題”


世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

世界の流れは、時々刻々専門家によって分析考察されています。それらを紹介し、もう一度岡崎研究所の目、日本の目で分析考察するコラム。

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ワシントンポスト紙のコラムニスト、イグネイシャスが1月18日付同紙に、「不快な真実:イスラム国を敗北させるのは何十年もかかる」との論説を書き、イスラム国が制圧困難な敵であることに警鐘を鳴らしています。論説の要旨は次の通り。

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政治家が認めない不都合な真実

 軍要人から内々に聞く警告と、共和党、民主党の政治家の議論との間には、恐ろしい懸隔がある。政治家はテロリストを敗北させると大声を上げるが、そのための費用、犠牲についてはあまり語らない。将軍や提督は、安価に成功は得られないことを知っている。この敵を敗北させるには政治家が認めるよりずっと大きく、長いコミットメントが必要である。

 先週、私(イグネイシャス)は中東担当の中央軍司令部を訪問した。そこで話された内容は、安心できるものではない。

 軍の指導者は、戦術的調整をする冷酷な敵と戦っていると知っている。ISは2014年中頃の支配領域の25%を失ったが、それからの弱さを補償する方法を工夫している。

 ISの司令官は機敏である。彼らはトンネルその他の隠れ場所を作り、ブルドーザーなどの重機で大きな車爆弾を作っている。偵察用に小さい無人機を使い、武器搭載無人機も準備しつつある。塩素やマスタードガスなどの化学兵器も使った。

 米軍人は、イラク、シリアでISの領域を掃討、保持するスンニ派兵力を作ることが、いかに難しいか学習した。スンニ派勢力は米国を信頼しておらず、長期駐留しうるか、疑っている。それに、地上軍を入れないのは「勝利」ではなく「封じ込め」狙いと考えている。ペンタゴンは反体制派育成に5億ドル投じたが、兵員は集まらなかった。①熟練した兵士の発見・訓練、②シリアの戦場、③トルコなど自己の目的を持つ地域パートナーとの協力、の困難さが教訓として残った。

 より深い教訓は、信頼できる軍は数か月では出来ず、一世代かかる仕事であることである。早い結果を望む米国は失望させられる。政治家も米国民も、この紛争には数十年のコミットメントがいるという現実を真正面から見るべきである。逆説的だが、米国がその兵員を守ろうとする決意が裏目に出ている。同盟国や敵は、米軍が安全な兵舎で、いい食事をし、テロ攻撃にさらされるリスクを最小限にしていることを知っている。米国は一緒に戦っていると言うが、現場ではそう見えない。パートナーと一緒に住み、戦うことはもっと危険だが、それが堅固な同盟への唯一の道かもしれない。

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