安保激変

2016年3月2日

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小谷哲男 (こたに・てつお)

日本国際問題研究所 主任研究員

1973年生まれ。同志社大学大学院法学研究科博士課程満期退学。ヴァンダービルト大学日米関係協力センター客員研究員、岡崎研究所特別研究員等を歴任。専門は日米同盟と海洋安全保障。法政大学非常勤講師及び平和・安全保障研究所・安全保障研究所研究委員を兼務。中公新書より海洋安全保障に関する処女作を出版準備中。

 中国が南シナ海で実効支配する拠点の軍事化を進めている。米メディアによって、パラセル(西沙)諸島最大のウッディ(永興)島にHQ-9地対空ミサイルが配備された衛星写真が公開され、世界の注目を集めている。同ミサイルはロシアのS-300のコピーだが、射程距離は100キロほどとみられ、近くを飛行する航空機には脅威となる。米軍によれば、ウッディ島には、HQ-9の他、監視レーダーや最新鋭のJ-11戦闘機やJH-7戦闘爆撃機の配備も確認されている。中国はパラセル諸島を拠点に南シナ海北部の防空能力を高め、これによって戦略ミサイル原子力潜水艦の基地がある海南島の防衛を固めようとしているのだろう。

15年9月3日の軍事パレードでの「HQ-9」地対空ミサイル

南シナ海を「中国の湖」とする

 また、米国の戦略国際問題研究所(CSIS)はアジア海洋情勢透明化プログラム(AMTI)のウェブサイトで、中国がスプラトリー(南沙)諸島で造成中の人工島に高周波レーダーらしきものを設置している衛星写真を公開した。中国はすでに人工島に建設した3000メートルの滑走路で民間機のテスト飛行を行っており、いずれは軍用機の運用や対空ミサイルの配備も開始するとみられる。スプラトリー諸島に軍事拠点を持つことで、中国は南シナ海南部の防空能力を高めることができる。

 中国がこのままパラセル・スプラトリー諸島で軍事化を進め、制空権を固めれば、南シナ海上空に防空識別圏を設定し、アメリカ海軍が行っている空からの偵察活動を妨害するだろう。その上で、南シナ海を「中国の湖」とするために、外国艦船の航行の権利を制限し、独自のルールを押しつけると考えられる。民間の船舶や航空機の運航にも影響が出るだろう。

 米国は中国が南シナ海を軍事化していると非難したが、中国は米国が「航行の自由作戦」によって南シナ海問題を「軍事化」していると反論し、ミサイルの配備は「自衛」措置であり、「軍事化」ではないと自らの立場を正当化している。米太平洋軍のハリス司令官は、中国が南シナ海で軍事拠点を拡大していることに対抗するため、今後「航行の自由作戦」をより強化すると述べているが、中国はこれを逆手にとってさらに軍事化を進めると考えられる。

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