チャイナ・ウォッチャーの視点

2009年11月18日

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城山英巳 (しろやま・ひでみ)

時事通信社外信部記者

1969年生まれ、慶應義塾大学文学部卒業後、時事通信社入社。社会部、外信部を経て2002年6月から07年10月まで中国総局(北京)特派員。 外信部を経て11年8月から2度目の北京特派員。11年、早稲田大学大学院修士課程修了。現地での中国取材は10年に及ぶ。16年5月に帰国し、現在外信部記者。近著に『中国 消し去られた記録〜北京特派員が見た大国の闇』(白水社)、著書に『中国臓器市場』(新潮社)、 『中国共産党「天皇工作」秘録』(文春新書、「第22回アジア・太平洋賞」特別賞受賞)、『中国人一億人電脳調査』(文春新書)がある。14年に戦後日中外交史スクープで13年度「ボーン・上田記念国際記者賞」を受賞。

 北京には、11月15日からのオバマ米大統領の中国訪問を、「期待」と「不安」を持って待つ人たちがいた。地方幹部の腐敗、警察の横暴、土地の強制収用などに不満を高め、北京の中央機関まで訴えに来た陳情者であり、民主化を求める人権派の活動家・弁護士らだ。

 しかし、危険を冒してまで農村から上京し、「人権大国」から訪中したオバマ大統領に近づこうとした陳情者らを待っていたのは大量の警察だった。そして、大統領の訪中を前に、北京では1000人以上の陳情者や、人権活動家らが次々と拘束された。結局、地球規模の問題での米中協調を優先したオバマ大統領が、陳情者らの期待を裏切り、人権問題やチベット・ウイグル問題で、中国を強くたしなめなかった。

 17日午前、北京・人民大会堂。おそろいの赤い色のネクタイを締めた胡錦濤国家主席とオバマ大統領。首脳会談後の共同記者会見でのキーワードは「21世紀の挑戦に向けて連携する米中」であり、国営新華社通信発行の『瞭望』誌はこれについて「未来の大方向」と表現している。

 1泊2日の駆け足訪日に比べ、中国に4日間も滞在したオバマ大統領は、北京の紫禁城(故宮)や郊外・万里の長城にまで足を延ばした。「今回の訪問の主要な目的は、中国そのものや、中国の未来への展望に関する理解を深めることだ」と上海で意気込みを語った。

 一方、中国側はオバマ大統領の訪中をどう迎えたか。東京・サントリーホールで行われた14日のオバマ大統領のアジア外交政策演説。国営新華社通信は至急電で大統領の発言をこう伝えた。

 「米国は中国を封じ込めるつもりはない」。明らかにはオバマ大統領の対中政策を歓迎している証拠だ。

異例づくしのオバマ大統領の訪中

 こうした中で、米中両国が今回のオバマ大統領訪中を控え、歴代大統領の際と違う対応を取ったことは注意しなければならないだろう。

 第一に、最近のクリントン、ブッシュ両政権では発足直後、米国内・国際社会向けに人権問題などで対中強硬姿勢を示すことが恒例だった。しかし、『瞭望』誌は、「オバマ大統領就任後に『過渡期』のごたごたがなくなった」と評価する。

 さらに従来なら大統領訪中に合わせ、中国は民主活動家らの釈放など対米配慮姿勢を示すケースが繰り返されたが、今回は人権問題のほか、通商摩擦でも強硬姿勢を打ち出した点は異例だろう。オバマ氏訪中直前の11月9日、新疆暴動に関与した9人への死刑が執行されたほか、6日には中国商務省が、米国製自動車の反ダンピング(不当廉売)・補助金に関する調査を開始したと発表した。このタイミングでの強気の姿勢は、「米国に譲らない中国」をオバマ氏に突き付けたものだ。

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