中国が16年南シナ海支配を強化する理由


世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

世界の流れは、時々刻々専門家によって分析考察されています。それらを紹介し、もう一度岡崎研究所の目、日本の目で分析考察するコラム。

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米シンクタンクCSISのポリング研究員が、2月18日のCSISのサイトで、2016年は、中国がますます南シナ海における実効支配を強化しようとするため、緊張は一層激化するだろう、と指摘しています。要旨は、次の通りです。

中国建国記念軍事パレードの模様(IStock)

国際的な無法者と化す中国

 南シナ海問題に関する中比仲裁裁判は、今年5月下旬頃には、中比両国に法的拘束力を持つ判決を下すとみられている。

 15からなる訴訟内容は複雑であり、最終的に裁判所がどのような結論を出すのかは明らかになっていない。しかし、中国の「9段線」主張には説得力がなく、中国は国連海洋法条約が定める以上の領海、EEZ、大陸棚を主張しうる根拠を有していないとの判決が下されるのは、ほぼ確実であろう。もっとも、この判決は南シナ海で係争中の島・岩に対する中国の領有権主張に影響を及ぼすこともなければ、広範な海洋権益主張をやめさせることにもならないかもしれない。しかし判決は、中国の地形から生じる海洋主張の内容を、地図上の曖昧な点線ではない形で明確にするよう命じるものとなるはずである。

 中国は裁判所に命令されたからといって、急に主張を明確化することはないだろうが、2013年初頭にフィリピンが仲裁裁判に提訴した時から、中国は提訴を取り下げるよう躍起になってきた。判決が出て、中国が国際的な無法者として評判を落とすコストを自覚しているからである。このコストは、中国が政治的妥協を検討する一因となっている。すなわち、中国は歴史的権利を主張するのではなく、国連海洋法条約に基づく形で「9段線」を再定義し、フィリピンが提訴を取り下げることと共同経済開発に合意することを条件に、本格的な交渉に取り組む可能性がある。こうした政治的妥協を促進するために、米比は裁判所判決に対する国際的な支持を取り付けるキャンペーンを張る必要がある。判決に対する支持は、豪州、日本、欧州の他、東南アジア諸国からも取り付ける必要がある。

南シナ海で中国が軍事力を増強させる2016年

 2015年末、中国はスプラトリー諸島で民間機の試験飛行を行い、運用可能な滑走路を確立した。スビ礁とミスチーフ礁の滑走路もまもなくそうなるはずであり、このまま何もしなければ2016年前半にも軍用機の試験飛行が実施されよう。その他4つの人工島でも、中国は海空軍のための港湾施設、レーダーの整備などを継続している。さらに、永興島で地対空ミサイルを配備したように、2016年に南シナ海で中国の軍事力が増強されることは明白である。

 南シナ海における中国の海空能力の向上は、東南アジア諸国に域外国の関与を求める声を大きくさせ、米国が当該海域における航行の自由作戦の頻度を上げているように、既に豪州も東南アジア海域の哨戒活動を拡大しつつある。

 日本でも豪州やフィリピンをはじめとする地域パートナー国との防衛協力を拡大するとともに、新日米ガイドラインを通じて南シナ海の哨戒活動における役割を拡大するかどうか議論されている。また、インド海軍も、ベトナムに対して装備を提供したり、日米豪と安全保障パートナーとなったりしている。

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